2025年も残りわずか。国会がある永田町周辺は、高市早苗首相にとって半年間にわたる来年の通常国会で予定される長丁場の国会論戦を控え、嵐の前の静けさのようにひっそりしている。参院選と東京都議選が同じ年に行われた、12年に1度の選挙の年だった2025年とは対照的に、来年2026年は衆院解散が行われない限り、大きな選挙の予定はない「なぎ」の年だ。それでも、高市首相は、物価高対策や外交関係など懸案を抱えたまま新しい年を迎える。なぎの時ほど、何かが起きるといわれるのも永田町。どんな2026年の国会になるのだろうか。

自民党総裁選出直後に、「働いて、働いて、働いて、働いて、働いてまいります」と強い決意を口にして、女性初の内閣総理大臣に就任した高市首相の言葉は、1年の言葉を象徴する新語・流行語大賞を受賞した。「働き方改革に逆行するのでは」という批判も出たが、個人的には、自身の中にある強い決意を口にしたものだと思っている。その後、本人がほとんど睡眠時間を取れていないと打ち明けたり、秘書官らをまじえての午前3時からの仕事開始など、「目の前の仕事を後回しにしない人」(関係者)といわれる高市首相のハードワーカーぶりが波紋を呼んだ。ただ、あの「働いて…」は、よくも悪くも国民の記憶に残る形で、高市首相を含めた政治全体への関心を、より幅広い層に広げるきっかけになったのではないかと感じる。

対照的に、今年も国民の神経をさかなでするような発言も、少なくなかった。

今年5月、コメ不足で国民が苦しむさなかに、佐賀市内の会合での講演で「私はコメを買ったことはない。支援者の方がたくさんくださるので、まさに売るほどある」などと発言し、結果的に更迭されたのは江藤拓元農相。当初、発言は「ウケ狙い」だったとして、発言が公になった後も「修正」にとどめていた。批判が広がると、当時の石破茂首相から厳重注意を受けて撤回したが、後の祭りだった。買いたくてもコメが買えない国民がどれほどいるかという、ところに思いが至らなかったのか、ことの本質が分かっていないような言葉だった。その後は備蓄米の放出のあり方、今はおこめ券の是非で、農政は1年を通して関心が注がれるテーマになった。政治家の言葉の大きさを、高市首相とは対照的な形で実感した言葉でもあった。

ことの本質が分かっていないのではないだろうか、という観点では、昨年元旦に起きた能登半島地震をめぐり、「二地域居住」の推進について触れる中で、「運のいいことに能登で地震があった」などと発言した鶴保庸介氏は、参議院予算委員長を辞任した。こうした「失言」問題で、石破自民は7月の参院選で敗北。党総裁選前倒しを求める声が党内から出たが、石破氏の進退問題は2カ月近く、尾を引いた。

続投に意欲を示す石破氏の言葉と、退陣を求める声。こうした「石破おろし」も結局のところは、国民不在の権力闘争。その後の、自民党総裁選という新たな権力闘争の末に生まれたのが今の高市政権だった。

来年の通常国会は、1月23日召集が予定され、もう1カ月を切っている。高市首相は実質的な冬休みに入っているが、政界関係者は「総理のことだから、働いて、働いて…の心境は、休み中も変わらないだろう」と推測していた。首相となった自身の言葉に潜む責任の大きさを、高市首相は、半年近い長丁場となる、初めて首相として臨む通常国会で、あらためて感じることになるのではないか。そうも感じている。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)