ラクトフェリンで免疫力をアップさせよう。ラクトフェリンとは母乳や唾液に含まれるタンパク質の一種で、現在猛威を振るっているノロウイルス対策として注目されている。このほか、ガン細胞やウイルス感染細胞を退治するナチュラルキラー(NK)細胞を活性化する効果や歯周病菌の抑制などが報告されている。ヨーグルトなどで手軽に摂取できるラクトフェリンで体調を整え、この春を快適に過ごそう。

歯周病菌の抑制も ヨーグルトなどで手軽に摂取

 ラクトフェリンには母乳、特に赤ちゃんに初めて与える初乳に多く含まれる。抵抗力の弱い赤ちゃんを、細菌やウイルスから守る重要な成分と考えられている。鉄と結合しやすい特性から赤みがかった色をしており、乳(ラクト)の鉄結合物質(フェリン)として名前が付いた。

 近年、このラクトフェリンがノロウイルス対策として注目を集めている。例年ノロウイルスは冬から春にかけて流行し、幼児や高齢者が重篤な胃腸炎を引きおこすこともある。昨年11月に名古屋市で開催された第12回国際ラクトフェリン会議で、大手乳業会社がノロウイルスに対するこれまでの研究を報告。それによると、保育園児がラクトフェリン配合食品を1日400ミリグラム、16週間にわたって摂取したところ、ノロウイルス胃腸炎の発症率が有意に低下したという。

新型ウイルスも検出

 また、ラクトフェリン配合食品(1本100ミリグラム)を日常的に摂取している人を対象にした追跡調査では、摂取頻度が高い人ほど冬の間にノロウイルス胃腸炎と診断された人の割合が有意に低かったという。

 ラクトフェリンには腸内の免疫力をアップさせるという間接的な効果に加え、ウイルスが腸内細胞に付着したり増殖するのを防ぐ直接的な効果があると考えられている。今年は3月に入ってもノロウイルス集団感染のニュースが相次ぎ、免疫を持たない人が多い新型ウイルスも各地で検出されている。しっかりとした手洗い、食品の十分な加熱などに加え、ラクトフェリンの摂取が重要な予防策といえそうだ。ノロウイルス対策として、定期的にラクトフェリン入りヨーグルトを食べている幼稚園もあるという。。

がん発生なども関係

赤みがかかった色が特徴のラクトフェリン
赤みがかかった色が特徴のラクトフェリン

 また、ラクトフェリンがNK細胞を活性化する効果も報告されている。NK細胞とは人間の免疫システムの中で重要な働きを担っている細胞で、がん細胞やウイルスに感染した細胞を最初に見つけ出して退治する。マウスを使った実験で、ラクトフェリンを与えたマウスは、与えないマウスと比較して血中のNK細胞の数が有意に増加し、活性も高くなったという。がん発生や老化に関係があるといわれる活性酸素を抑える働きもあるという。

口腔衛生の改善効果

 このほか、ラクトフェリンを含む食品が、歯周病菌の減少など口腔(こうくう)衛生改善効果があることも最近の研究で明らかになっている。ノロウイルスだけでなくO157、大腸菌、ロタウイルスなどにも効果があるといわれる。花粉症対策としても期待されている。

 免疫力アップに加え、坑ウイルス、坑酸化などさまざまな機能が確認されている健康成分ラクトフェリン。ヨーグルトなどで手軽に摂取できるのも魅力だ。

大手乳業会社1960年代から研究

ラクトフェリン入りのヨーグルトなどで摂取できる
ラクトフェリン入りのヨーグルトなどで摂取できる

 ラクトフェリンは1960年代から大手乳業会社などが研究を続けている。育児用ミルク開発の中で、母乳に含まれるラクトフェリンの持つ働きが早くから注目された。

 ラクトフェリンは牛乳(生乳)にも含まれているが、熱に弱く抽出が困難といわれていたが、抽出技術と殺菌技術の進化などで、80年代にはラクトフェリン入りの育児用ミルクが国内で市販された。現在はラクトフェリン入りヨーグルト、ラクトフェリンが含まれる栄養補助食品が市販され、スーパーやコンビニなどで購入できる。

 ラクトフェリンの効果やウイルス感染を抑えるシステムなどについては現在も大学や企業を中心に研究が進められ、学会も定期的に開催されている。