衆院3補欠選挙は、唯一の与野党対決となった島根1区に自民、立憲民主両党の党首が入り、総力戦を展開した。保守王国・島根で敗れれば政権運営の主導権を失いかねないと必死の岸田文雄首相。裏金事件に対する批判票の受け皿となり3勝を目指す泉健太立民代表。東京15区と長崎3区で立民を追う日本維新の会を含め、党の命運を懸けた激戦は続く。

▽裏金事件で逆風

「政治とカネで大きな政治不信を招いていることに、自民党総裁としておわび申し上げる」。21日、島根県出雲市の街頭。首相は裏金事件に関し陳謝すると「思い切って改革しなければならない。今国会で政治資金規正法を改正する。私が先頭に立つ」と強調した。小渕優子選対委員長も駆け付けた。

島根は1996年の小選挙区制導入以降、自民が小選挙区議席を独占したが、今回は裏金事件に加え世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題が尾を引く。共同通信の電話調査によると、自民支持層の6割弱、公明党支持層の5割しか固め切れていない。ベテランは「自民を懲らしめようとの意識が広がっている」と焦りを募らせる。

首相はこの日、コンビニエンスストア前などで計5回、乗っていた車から降りて住民らと握手や写真撮影に応じた。1票でも上積みしたいとの思いが見受けられるものの「裏金事件の逆風」(官邸筋)をはねのけ、勝利につなげられるかどうかは分からない。

▽1勝以上の価値

「裏金事件の真相解明も政治改革案の提示も、自民は遅れている。自民党政治に嫌気が差している皆さん、今こそ一緒に立ち上がりましょう」。21日、松江市の街頭。泉氏は裏金事件に触れると、立民への支持を呼びかけた。辻元清美代表代行と連合の芳野友子会長が脇を固めた。

立民は島根の戦いを「天王山」(岡田克也幹事長)と位置付ける。選対筋は次期衆院選を見据え「島根の勝利は全国の保守地盤の選挙に勇気を与える。1勝以上の価値がある」と意気込む。

共同通信調査で、立民は島根1区で支持層の9割以上をまとめ、無党派層も6割を固めた。自民と対照的だ。東京15区、長崎3区でも先行する。立民執行部は全勝を期し、28日の投開票日まで島根入りを続ける。

一方の維新。自民の不戦敗により、東京と長崎で漂流する「保守票」に狙いを定める。関係者は「衆院解散・総選挙をにらみ、自民が候補擁立を見送ったのを機に浸透を図りたい」と明かす。

馬場伸幸代表は21日、東京・江東区での街頭演説で裏金事件を巡り、自らを処分しなかった首相を非難。「一般企業で部下に責任を押し付けるのは通用しない。首相にリーダーの資格はない」と断じた。(共同)