岸田政権の命運を左右する衆院3補欠選挙を巡り、投票率が焦点の一つとなっている。島根1区は自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件への不満が自民支持者に広がり、棄権増を懸念する声が続出。東京15区、長崎3区も自民不戦敗で熱気を欠くとの見方がもっぱらだ。そもそも補選は低投票率となる傾向があるが、今回は-。与野党は28日の投開票日に向けて有権者の動向を注視する。

前回衆院選の東京15区の投票率は58・73%、島根1区61・23%、長崎3区60・93%。井田正道明治大教授(政治行動論)は補選投票率を巡り「関係地が限られるため報道を目にする機会が少なく、比例代表の投票ができないことも影響して一般的に低い」と指摘する。

だが今回、投票率を押し下げる要因となりそうなのはそれだけではない。唯一の与野党対決である島根1区は自民の細田博之前衆院議長の死去に伴う。細田氏は裏金事件で批判を浴びた清和政策研究会(安倍派)の会長を務めた経緯があり、自民への風当たりは強い。

自民は強い支持組織を持ち、一般的に低投票率は有利とされる。県連幹部は「長年の自民支持者も今回の選挙では党を見限り、棄権する可能性がある。投票率低下はマイナスだ」と警戒する。

自民候補不在の東京15区。江東区が区域だが、同区では昨年、区長選が2度も実施された。関係者は「有権者は『何回目の選挙か』としらけムード。投票率は40%を切る」と踏む。公明党筋は「自民、公明支持者の行き場がない」と語った。同じく自民候補がいない長崎3区でも、日本維新の会と争う立憲民主党の陣営幹部は「投票率は50%に届かない」と予測する。

自民に比べて支持組織が弱い野党は、無党派層の取り込みを選挙戦略の柱と位置付けてきた。無党派層が裏金事件を受けて政治不信を募らせ、選挙にそっぽを向く事態は避けたいとアピールに懸命だ。立民の泉健太代表は「(棄権は)自民の古い政治の延命になる」と強調。維新の馬場伸幸代表も「選挙に行かなければ、今までの政治が続いてしまう」と訴える。(共同)