岸田文雄首相は2日(日本時間同日)、フランス・パリで開かれた経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会開会式で議長国として基調演説した。生成人工知能(AI)のルール形成の枠組み「広島AIプロセス」に触れて「安心、安全で信頼できるAIの実現に向けた議論を進める」と述べ、取り組みを主導する考えを表明した。OECDが掲げる自由で公正な経済秩序をアジアに拡大させる重要性を訴えた。

閣僚理事会は2日開幕した。3日までの日程で、日本は2014年以来となる議長国を務める。首相は生成AIに加え、自由貿易、経済安全保障といった国際社会の課題解決に努力する姿勢を強調。賃上げや成長型経済への移行に取り組む自らの経済政策もアピールした。

首相は、演説に先立つ関連会合でAIプロセスへの賛同国を拡大するため「フレンズ(友好国)」会合の立ち上げを発表したと説明。「AIによってもたらされる人類共通の機会とリスクについて、共通の志を持つ国が連携しよう」と呼びかけた。演説後、記者団に「49カ国・地域の参加を得た」と語った。演説では信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)の具体化も主張した。

国際社会が多極化や分断、紛争に直面する中、価値を共有するOECDが非加盟国に手を差し伸べる重要性も指摘。「日本はアジア地域との架け橋となり、OECDが将来にわたって世界経済を主導するため貢献していく」と語った。

経済的威圧への対応、サプライチェーン(供給網)強化、重要技術の保護に向けた協力の必要性にも言及。昨年の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の成果を踏まえ「同志国・機関との連携を推進する」とした。

日本の経済政策に関し「賃上げや設備投資を一層加速させ、日本の稼ぐ力を復活させる」と言明。生産性の向上へ「AI、自動運転、宇宙、中小企業の海外展開への支援を強化する」と述べた。(共同)