家族や企業を題材に人間の内面を描き、「内向の世代」の代表的作家として知られる文化功労者の黒井千次(くろい・せんじ、本名長部舜二郎=おさべ・しゅんじろう)さんが12日、肺炎のため東京都の病院で死去した。94歳。東京都出身。葬儀・告別式は20日午前11時から東京都墨田区両国2の8の10、回向院で。喪主は長男聡介(そうすけ)さん。
東京大経済学部を卒業後、富士重工業に入社し、会社員生活の傍ら小説を執筆。労働者の苦難を描いた「時間」で1970年に芸術選奨新人賞を受賞。同年に会社を退職して専業作家に。政治的なイデオロギーから距離を置いて、平凡な市民の日常生活を繊細に描き、古井由吉さんや後藤明生さんらとともに「内向の世代」と呼ばれた。
84年、郊外の4家族を描いた「群棲」で谷崎潤一郎賞。95年「カーテンコール」で読売文学賞、2006年には「一日 夢の柵」で野間文芸賞を受けた。その他の作品に、小説「走る家族」「五月巡歴」、エッセー集「働くということ」、戯曲集「家族展覧会」などがある。
1980年代後半から約25年間にわたって芥川賞選考委員を務めた。日本文芸家協会理事長や日本芸術院長を歴任。日中文化交流協会会長を務めていた。

