「あれ、あれ」。歌手の名前や俳優の名前が出なくなり出したら、認知症の前段階であるMCI(軽度認知症)にならないよう注意が必要だ。MCIだけで、日本では400万人いるといわれている。

・牛乳で認知機能を守る

 中国人民解放軍総合病院で約1万人を対象に行われた研究で、牛乳をたくさん飲む人たちに、認知障害リスクの低下が見られた。さすが中国。データの規模が大きい。

 「牛乳は飲むな」という人がいるが、長野県を平均寿命日本一にするときに、海がないため、魚の良質なタンパク質が少なかったので、牛乳を1日1本飲むように勧めた。

・卵で長寿世界一

 現在、世界最高齢の女性はイタリア人のモラノさん、117歳である。彼女は毎日必ず、卵を2個食べ続けている。日本では、コレステロールを気にして、卵は1日1個にしている人も多いが、ぼくは1日卵3個を目標にしてきた。牛乳や卵は健康で長生きするための大切な武器だ。モラノさんの卵2個というのは、妥当な選択のように思う。

・低栄養は死亡率が高い

 65歳以上の日本人の17・8%が低栄養であるということが分かった。アメリカの研究では、入院中低栄養だった高齢者の退院後3年以内の死亡率は約8割。低栄養は抵抗力が弱く、ほとんどが死ぬということだ。

 60歳男性に必要な1日のタンパク質は約63グラム。ステーキにしたら約300グラムである。日本人に300グラムのステーキはなかなか食べきれない。だから牛乳を飲んだり、卵を食べたり、肉や魚、納豆を食べるのがいいのだ。

 低栄養にならないことが、認知症予防にも寝たきり予防にも大事だということが分かる。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日生まれ、東京都出身。東京医科歯科大医学部卒。長野・諏訪中央病院院長で「健康づくり運動」を実践。脳卒中死亡率の高かった長野県の長寿日本一に貢献。04年からイラク支援を始め、小児病院へ薬を届けたり北部の難民キャンプ診察も続けてきた。文化放送「日曜日はがんばらない」(毎週日曜午前10時)出演。