将棋の最年少プロ棋士、藤井聡太四段(14)が12日、自身の持つデビュー後の連勝記録を「17」に更新した。大阪市の関西将棋会館で指された王将戦1次予選で先手の西川和宏六段(31)を84手で破った。「17」は個人の歴代連勝記録では歴代9位タイで、堂々のベスト10入り。中学生棋士がレジェンドたちの仲間入りを果たした。終局後には出待ちの大阪のおばちゃんも出現するフィーバーぶり。次戦は18日、加古川青流戦で竹内雄悟四段(29)と対戦する。

 相手がひるむと、一気に攻め込んだ。藤井四段は中盤から優勢を築き、鋭い攻めでジリジリと押した。午前10時から始まった対局は84手、午後3時21分という早い時間で投了に追い込んだ。終局後、西川六段は「ミスをしてしまった。完敗です」。観戦した関係者は「怪物や。強すぎる」とつぶやいた。

 これで自身の持つデビュー後の公式戦連勝記録を17に更新した。個人の歴代連勝記録では歴代9位タイ。羽生世代で日本将棋連盟の会長を務める佐藤康光九段、「貴族」の愛称を持つ佐藤天彦名人と並び、棋界のレジェンドたちの仲間入りとなるベスト10入りを果たした。

 公式戦で無傷の藤井四段は「ここまで連勝できるとは思ってもみなかった。一局、一局の積み重ねなので、次局も普段通り指したい」と、はにかみながら振り返った。

 大きな注目を集めても気負うことはない。この日もテレビカメラ15台、約50人の報道陣が詰めかけ、ワイドショーは生中継。それでも「注目をしていただいている舞台で将棋が指せるのは、ありがたくてうれしい。これを続けられるように頑張りたい」と冷静だ。

 終局後には会場となった関西将棋会館前に、出待ちの大阪のおばちゃんが現れた。大阪市の女性(70)はスマートフォンを片手に「こんな孫がいたらね。記念に1枚、写真を撮りに来た」。フィーバーは、棋界を超えて盛り上がる一方だ。

 5歳で将棋を始め、小学4年のときにプロ棋士養成機関の奨励会に入会した。将棋に打ち込む一方、小学校高学年のときには連載小説に夢中になった。司馬遼太郎「竜馬がゆく」、沢木耕太郎「深夜特急」。中学は高校受験がない名古屋大教育学部付属中を選んだ。将棋でトップを目指すためだ。

 どこまで連勝を伸ばすのか。次戦は18日、若手棋士らが対象の加古川青流戦で竹内四段と対戦する。対局を重ねるごとに、神童の強さが増していく。【松浦隆司】

 ◆王将戦 1950年(昭25)創設。本年度で第67期となる。全棋士参加で、1次予選、2次予選をトーナメントで行い、その勝ち上がり者3人と、前期挑戦者決定リーグで残留したシード棋士4人で総当たり戦を行う。そのトップ棋士が久保利明王将への挑戦権を得る。例年1~3月に7番勝負を行う。