築地か、豊洲か-。東京都議選告示前に小池百合子知事が「築地は守る、豊洲を生かす」と併用案を発表した。大方針は示したが具体策の説明はなく、築地市場がある中央区、豊洲市場がある江東区は揺れている。小池氏が代表の「都民ファーストの会」の候補者ですら有権者への説明に苦慮。本部から“併用案解説書”が届いた。そこから見えてきた築地の「民設民営プラン」。豊洲の移転、築地跡地売却を訴えている自民党は「選挙向けだ」と批判を強めている。

 豊洲移転問題のいわゆる「百条委員会」の委員長を務めた自民党の山崎一輝候補は都民ファの「築地=食のテーマパーク」案を「負のマーケットになる」と断言した。豊洲市場には「千客万来」という施設が整備される予定。一般観光客が買い物や食事を楽しめる場所で築地とかぶる。「地元を知らない落下傘候補にはビジョンも何もないだろう」と都民ファをけん制した。

 父である山崎孝明江東区長も「市場を受け入れる条件に千客万来があった。東京のど真ん中に、朝10時過ぎたら人がいなくなる『市場』だけがあっても意味がない。にぎわいを生む『場外』も一緒にということだった」と語った。

 都民ファはトライアスロンの第一人者で会社経営者の白戸太朗候補。豊洲市場が毎年約90億円の赤字を出すことに「分かっていたはずで隠していただけだ。民間企業だったらありえない」と既存勢力を批判した。

 小池氏が示した「豊洲=IT総合物流センター」について「魚を扱う以外にも利用できるのでは」と持論を展開。一部を「アマゾン」などのオンライン商店の物流拠点として利用する可能性について問われると「可能性はあるだろう」と語った。その場合、中央卸売市場のままでは卸売市場法の制約があるため、大胆な改革が必要となる。【三須一紀】

 ◆江東区 江戸時代初期はほとんどが湿地帯だったが中期には利根川水系の船運の終着地として発展した。1947年(昭22)に深川区と城東区が合併して誕生。豊洲地区は、23年(大12)の関東大震災のがれき処理による埋め立て地。37年に豊かな土地になるようにと命名された。人口約50万6000人。