水中カメラマン中村征夫(いくお)氏(72)の写真展「永遠の海」が、来月9日から東京・松屋銀座で開催される。2011年(平23)の東日本大震災以降、初めて三陸の海に潜って撮影した作品など、計130点が展示される。

 中村氏は1993年、取材で訪れた北海道・奥尻島で南西沖地震に遭遇。高さ30メートルの津波を浴びて、危うく命を落とすところだった。東日本大震災直後、ボランティアで被災地を訪れるつもりでいたが、北海道の記憶がよみがえり、潜るのが怖くなった。何度か潜っていた東北の海に行けなくなった。

 「東日本大震災の止めどなく流れる映像を使って、振り返るテレビ番組が見られない。裏にある悲しみが分かるから」。PTSD(心的外傷後ストレス障害)になったが、生薬7種類を煎じて飲み、回復。震災から約4年半たった15年秋、友人から勧められ、「海の中をのぞいてみたい」と思えるようになった。