次は33年ぶりの日本一じゃけえ-。プロ野球広島カープが甲子園での阪神戦に勝ち、セ・リーグ連覇を達成した18日、広島の街は歓喜に包まれ、悲願の日本一を期待する声が相次いだ。カープの本拠地マツダスタジアム近くにある愛宕(あたご)神社(広島市東区)では日本一を願い、必勝祈願祭を開くことが決まった。

 マツダスタジアムの北西約500メートルにある愛宕神社。「必勝祈願」の赤いのぼりが立ち、風になびく。カープの優勝が決まると、手作りのマジックボードから「1」が取り外され、「優勝 おめでとう!」の文字がつけられた。

 優勝後にはカープファンが参拝した。広島市の村上正博さん(74)は妻の進子(のぶこ)さん(73)と手を合わせ、優勝のお礼と日本一を祈願した。境内の野球ボールがデザインされた特注品の絵馬にはファンの思いが記されている。「昨年の忘れ物 Carp 日本一」。「今年こそカープ 日本一じゃ!」。

 神社を管理するのは地元の東愛宕と西愛宕の町内会の住民。東愛宕町内会長の小尻晋也さん(59)は「数年前から何か町が活気づくことができないかと考えていた」。球場から近く、試合開催時は周辺の駐車場が満車になった。神社周辺には商店などもあり、ファンに少しでも足を止めてもらうことはできないかと町内会で相談していた。

 同神社に「勝負の神様」の由来があり、3年前からカープの応援に力を入れてきた。球団からも許可を取り、特製ののぼりも作った。小尻さんは「応援することを決めた時は、まさか優勝するとは思ってもみなかった」。昨年は25年ぶりのリーグ優勝、今年は37年ぶりの連覇を達成した。

 神社は火の神様を祭るため、ファンの間では「救援投手の『火消し』に御利益がある」と広まり、参拝者が急増。昨年の優勝効果で、今年も必勝祈願に訪れるファンが後を絶たない。地域の神社がカープファンの「聖地」となり、全国区になった。町内も活気を取り戻してきた。

 熱烈なカープファンの小尻さんは「ファンの思いは1つ。日本一です」。近く町内会で話し合い、リーグ連覇を祝い、日本一を願う必勝祈願祭の日程を決める。【松浦隆司】

 ◆愛宕神社 火難を防ぐ「火伏(ひぶ)せの神」を祭る京都・愛宕神社が総本社。地元の住民にはなじみ深く、300年以上の歴史がある。「火消し」は野球用語でリリーフや抑えの投手を意味する。京都の愛宕神社は、明智光秀が織田信長を本能寺で討つ前に戦勝祈願に訪れたとされ、「勝負の神」としても知られる。