「ひふみん」こと、将棋棋士の加藤一二三(ひふみ)九段(77)が、あなたのお悩み相談に答えます。
14歳でプロになり、今年6月に引退するまで63年間、勝負の世界に身を置いてきました。敬虔(けいけん)なキリスト教徒として30歳で、洗礼も受けています。生きる厳しさと、聖書の教えをベースに、指導対局ならぬ、人生指南をしてくれます。毎週水曜日に掲載します。
<質問>
大学3年生の息子がマージャンにはまり、プロを目指したいと言い出しました。「まじめに就職活動をして、それなりの企業に入ってほしい」と思っているのですが、「自分の人生だからと」言うことを聞きません。本人の考えを尊重すべきでしょうか? 断固反対して、皆と同じような就職活動をさせるべきでしょうか?(48歳主婦・埼玉県)
<解答>
私はマージャンのことはまったくは分かりませんが、同じプロとして最初に言っておきます。「ただ好きなだけなら、プロへの道はおやめなさい。あくまで実力の世界ですから」と。それから、プロと手合わせをして「素質がある」と認められたのなら、目指しなさい。
将棋界のプロ棋士は皆、アマチュア時代に「すごい」とプロに言われて、プロになっています。谷川浩司前会長が少年時代に内藤国雄先生に認められて、プロを目指すようになったのがいい例でしょう。全国各地から将来の名人候補が集まって競い合うプロの世界で、そこそこやれる人ならたくさん居ます。
大山先生(故大山康晴十五世名人)は、師匠の木見金治郎先生の所に弟子入りしようと頭を下げに行ったところ、「見込みがない。帰れ」と言われたそうです。そこで「なにくそ」と意地を見せて、将棋界を代表する棋士になりました。それくらいの意地がないと大成できない世界です。
就職活動もいいでしょう。でも、花形企業だって、やがて斜陽産業になります。かつての「重厚長大」産業は現在、どんな状況でしょうか? 同級生で、当時花形だった繊維産業に進んだ人たちの行く末は推して知るべしです。いい会社に入ったとしても、「ブラック企業だった」などということもあります。業界について、よく調べた方がいいでしょう。
かつて、ヨハネ・パウロ2世はプールで泳いでいる写真をカメラマンに撮られました。側近から「やめさせましょうか?」と打診され、こう返したそうです。「100枚も撮ったら飽きるから、(気の済むまで)撮らせておきなさい」と。
今は夢中になっている、息子さんの本気度を試してみてください。
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