電車内で盗撮を訴えられ、駅から線路に逃走した男は警官だった。福岡県警は21日、北九州市八幡東区のJRスペースワールド駅で先月、盗撮した疑いがある上に、線路に逃走したとして、北九州市警察部の巡査部長(38)を停職3カ月の懲戒処分にし、県迷惑行為防止条例違反の疑いで書類送検した。今年は、痴漢を疑われた男がホームから線路に逃走する事件が各地で相次いだが、ついに警官までが加わった。

 県警によると、書類送検容疑は11月28日午前6時35分ごろ、JR鹿児島線の博多発小倉行き普通列車内で、50代女性のスカート内を盗撮した疑い。気付いた女性が被害を訴え、巡査部長はスペースワールド駅で降ろされた。その後、駅ホームから線路に飛び降り、逃走。線路上を約1キロ逃走していたという。

 翌日に上司に申告し、出頭した。巡査部長は北九州市警察部の機動警察隊に所属。同隊は、地域・刑事・交通などの警察官がパトカーや白バイなどで重大事故、事件の初動対応や暴力団に対する積極的な摘発を行う組織とされる。巡査部長は「盗撮サイトで興味を持ち、昨年末ごろから十数回、同様のことをした」と話し、依願退職した。

 線路逃走の影響で上下線が数分間運転を見合わせたため、県警は鉄道営業法違反容疑でも捜査したが、運行妨害の意図はなかったとして立件を見送った。

 福岡県警では今年、不祥事が続いている。2月には、不倫相手の独身女性と結婚披露宴を開いた当日、既婚者だとばれて式場が紛糾した男性巡査部長が減給の懲戒処分を受けた。7月には、6月に自宅で妻を殺害したとして殺人罪で起訴された通信指令課の巡査部長を懲戒免職。7月30日には大麻所持の疑いで、警部補を逮捕。証拠品の大麻を盗んでいたという。

 県警の今年の懲戒処分はすでに21人。県警は今回の巡査部長のほか、寮で同僚の現金を盗んだとして博多署の警官も書類送検し、懲戒処分にする方針という。福岡県民からの信頼は失墜する一方だ。

<「痴漢と指摘」線路に逃げた最近の主な事案>

 ▼4月25日午前8時45分ごろ 都内のJR埼京線板橋駅から男が線路に飛び降り逃走。都迷惑防止条例違反罪に問われ、東京地裁から懲役6月保護観察付き執行猶予3年の判決を受けた。3~4月に相次いだ痴漢の線路への逃走をニュースで知り、線路に逃げたと供述。

 ▼5月12日午前0時15分ごろ 都内のJR上野駅で痴漢を指摘された男性が駅事務室から逃走後、近くのビルから転落、死亡した。

 ▼同15日午前8時15分ごろ 横浜市の東急田園都市線青葉台駅で痴漢を指摘された男性がホームから線路に逃走し、電車にはねられて死亡。

 ▼同25日午前9時20分ごろ 都内のJR新宿駅で痴漢を指摘された男が埼京線ホームから線路に逃げ、駅員用事務室に侵入し逮捕される。

 ▼8月4日午後7時半ごろ さいたま市のJR武蔵浦和駅で痴漢を指摘された男数人のうち1人が、線路に飛び降りて逃走。