「北」という言葉が「今年の漢字」に選ばれた2017年-みなさん、どんな1年でしたか? 日刊スポーツでは、インターネットによる「重大ニュース2017」投票を20~27日に実施し、その結果「陸上桐生、100メートルで9秒98」が1位に選ばれました。コメンテーターとしても活躍し、舌鋒(ぜっぽう)鋭い落語家立川志らく(54)が去りゆく2017年を振り返り、日本の「わびさび」「粋(いき)」「あうんの呼吸」の大事さをぽつりぽつりと訴えた。【寺沢卓、上岡豊】

 やはり、大相撲のことは敏感だった。志らくの瞳がメガネの奥でキラン、と光った。静かに、でも、開いた口から、熱い思いがほとばしった。

 志らく 同じ香りがするんですよ。師匠の談志も落語協会の古いしきたりを嫌って、飛び出た。しこたまたたかれました。なぜ、伝統を、しきたりを守れないんだ。「談志と落語協会」の構図と「貴乃花と相撲協会」と同じ香りが漂ってくるんですよ。

 根底には、日本人として感じる「独特の間」にあるという。

 志らく 日本人の「粋」とか「おつ」とか「わびさび」の世界ですよね。申し訳ないが、モンゴルの人らに「横綱の品格」って、無理なところもあるんじゃないですか? 彼らは横綱相撲という意味を心底理解しているのかしら。どんなことも体ひとつで受けて立つ。横綱がエルボー(ひじを張って打ち込むこと。プロレス技)とか、猫だまし(相手の目の前でパチンと手をたたいて精神的動揺を助長させる技)なんぞを使ってはいけないんです。貴乃花は現役時代にそんなことしなかった。

 そもそも、日馬富士が引退する事態にまで発展したが、貴乃花親方には非が見当たらないとも断言する。

 志らく ビール瓶とかテレビのリモコンとかは問題じゃない。どんなことがあっても、暴力はいけない。貴乃花は弟子を守ってるのよ。勝負の世界だからモンゴル人同士が集まるのだって、勝負に影響する何かがあるかもしれない、行かせたくない、というのは流れでは普通だと思いますよ。

 解決策として相撲協会の改革に言及した。

 志らく 談志は非難を浴びたんだけど、ビートたけしさんが「いや、談志師匠は面白いよ」とコメントしてくれた。そこから風向きが変わって、落語の世界が開けてきた。相撲も今、貴乃花がこの暴行事件をきっかけに戦っている。白鵬だって貴乃花には文句は言えないでしょ。もうね、貴乃花が理事長になるべき。で、元力士以外の優秀な人材をもっと相撲協会の理事に入れないと、組織として回らないですよ。

 最後に、師匠談志と貴乃花親方に共通する伝統への思いを語った。

 志らく 談志は落語を愛してました。貴乃花も相撲への愛情にあふれている。誰よりも伝統を重んじて、とことん愛を注いでいる。同じ香りがするんですよ。