「ひふみん」こと、将棋棋士の加藤一二三(ひふみ)九段(77)が、あなたのお悩み相談に答えます。

 14歳でプロになり、昨年6月に引退するまで63年間、勝負の世界に身を置いてきました。敬虔(けいけん)なキリスト教徒として30歳で、洗礼も受けています。生きる厳しさと、聖書の教えをベースに、指導対局ならぬ、人生指南をしてくれます。毎週水曜日に掲載します。

 

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 <質問> 交際している彼のことで相談です。どうにかしてたばこをやめてほしい。1日2箱吸うヘビースモーカーで、「体に良くないから」とお願いしても受け入れてくれません。それ以外に気になるところはありません。結婚も考えているのですが、どうにかしてたばこをやめてもらう方法はありませんか?(26歳 OL 山梨県)

 

 <回答> まず、彼氏に1手指南しておきます。「たばこ、やめた方がいいです。人生、女性の側に不満があると、よろしくない局面が多々ありますから」。せっかく好きになって、これから先の長い人生、結婚して一緒に歩んでくれようとしている相手の希望に沿ってください。

 それから、相談者へ。彼が勤務している会社で、産業医制度がありませんか? ほかにも禁煙外来とかカウンセラーなど、たばこをやめる方法をアドバイスしてくれる人が、近くにいるかと思います。探してみてください。

 「JT日本シリーズ」という公式戦がある将棋の世界も、時代の流れで、対局室では禁煙。喫煙する場合、別の場所に行きます。かつて盤に向かいながら紫煙をくゆらすのは、当たり前でした。喫煙者は、盤の近くに灰皿を置いていました。私は吸いませんが、目の前で相手が吸っていたこともあります。

 一時代を築かれた大山先生(故大山康晴十五世名人)も、自他共に認めるヘビースモーカーでした。あるタイトル戦で風邪をひきながらたばこを吸って、「うまくない」と気付いてやめたそうです。

 夜戦(将棋界ではこう表現します)と言って、夜になると中盤から終盤の大事な難所にさしかかります。より一層、脳みそをフル回転させなければいけないのですが、「吸っている時よりも調子が良かった」と言われました。以来、ぶっつりとおやめになってます。

 私の1324勝のはるか上を行く、将棋界で歴代通算1位の1433勝を挙げられたのですから、禁煙後の勝利もこのうちの何勝かはあると思います。

 「吸わない効能」が何かあると思いますので、おふたりで探してください。

 ◆募集 日刊スポーツでは、「ひふみん」の愛称で人気の将棋棋士・加藤一二三(ひふみ)九段(77)への質問を募集しています。▼郵便=〒104−8055、日刊スポーツ新聞社編集局文化社会部▼ファクス=03・5550・8828▼メールsoudan@nikkansports.co.jp。それぞれ「ひふみん」係へお願いします。皆さんのお悩みをたくさんお寄せください。