安倍晋三首相と野党4党首の党首討論が30日、約1年半ぶりに開かれた。4党が、45分の時間を分け合うと、最大でも立憲民主党の枝野幸男代表の19分。首相が本質をずらした答弁を多用し「(以前と)同じことを聞かれたから、同じことを答える」などの論理で逃げ切ったため、中途半端すぎるやりとりで終了した。

 無所属の会の岡田克也代表に2分を譲られ、森友、加計問題にしぼった枝野氏は、自身や夫人の関与があれば辞任するとした昨年2月の首相答弁に関し、28日の集中審議で、責任が生じる範囲を贈収賄に限定したことを「ひきょうな行為」と批判。すると首相は、過去にも同じ内容の答弁をしたと反論。「急に新しい定義を定めたわけではない。言葉を選んでほしい」と怒り、「森友問題の本質はそういうことなんですか」「私や妻に(問題を)持っていこうとするから、本質から外れる」と、はぐらかした。加計問題についても、首相は「大事なのは(認可までの)プロセスが公正公平だったかどうか」と正面から答えず、枝野氏は締めのひと言すら言わせてもらえず、時間切れとなった。

 共産党の志位和夫委員長も6分間でモリカケを追及。「改ざん、隠蔽(いんぺい)、廃棄、虚偽答弁。こんな悪質な行為を引き起こしたのは安倍政権が歴史上初めて」と迫ったが、首相は反省や防止策を並べ、志位氏が内閣総辞職を要求したところで終了。一方、国民民主党の玉木雄一郎代表はモリカケに触れず、日米関係などを質問。首相は終了後、玉木氏だけに握手を求めて歩み寄った。

 初の党首討論だった枝野氏は終了後、「質問に答えず、意味のないことをだらだら話す首相を相手に、今の党首討論は歴史的意味を終えた」と、ぶぜん。玉木氏も「柔軟に時間を増やすべき」。見せ場がなかった討論は、英国を参考に00年に始まった党首討論のあり方に一石を投じる機会になりそうだ。【中山知子】

 ◆党首討論 政権与党の党首である首相と野党党首が1対1の対面形式で行う国会での質疑応答で00年に導入された。質問者は衆院か参院で所属議員10人以上の野党党首に限られる。開催時間は45分間で首相からも野党党首に質問できる。