20年東京オリンピック(五輪)・パラリンピック開閉会式を演出する総合統括に、狂言師の野村萬斎(52)が就任した。福島県のJヴィレッジ(広野・楢葉町)で30日に開かれた大会組織委員会の理事会で承認された。五輪統括には映画監督の山崎貴氏(54)、パラ統括には広告クリエーティブディレクターの佐々木宏氏(63)が就任。五輪は野村と山崎氏、パラは野村と佐々木氏が中心に演出企画を制作する。3人は今日31日、都内で会見する。選手ファーストの観点から、通例約4時間の開会式を3時間台に短縮する具体的な検討も始める。

 野村がリーダーとなった理由を組織委中井元チーフ・セレモニー・オフィサーは「狂言、映画、舞台と伝統から現代まで幅広い見識がある。日本文化は多様なので間口が広い方が良いと判断した。8人をまとめるリーダーシップもあった」と語った。山崎氏は映画「ALWAYS三丁目の夕日」「永遠の0」で日本アカデミー賞最優秀監督賞を2度受賞し「広い世代に受け入れられ日本を代表する映画監督」として選ばれた。

 佐々木氏は16年リオ大会の東京大会引き継ぎ式の制作チームとして活躍。安倍マリオが登場した五輪版、「ポジティブスイッチ」というスローガンで、障害に屈せず各分野で活躍する人々に焦点を当てたパラ版の制作経験を継続して生かしてほしいとの理由だった。

 その他にも「総合チーム」を設置。歌手椎名林檎(39)、演出振付家MIKIKO氏(40)、大手広告会社電通の菅野薫クリエーティブテクノロジスト(40)、映画「君の名は。」を手がけた川村元気プロデューサー(39)、右下肢に障害がある栗栖良依クリエーティブプロデューサー(40)が就いた。椎名、MIKIKO氏、菅野氏もリオ引き継ぎ式制作チームだった。

 組織委によると3人の統括がさらに専門家を演出チームに招くことも可能で、映像や音楽を制作する実務スタッフを含めると全体は数百人規模となる。立候補ファイルでは約87億円の式典予算だが、4式典の大・小道具などで無駄を省くような仕掛けも検討する。

 8人が練った基本プランには「革新的なチャーミングな方法で」とある。中井氏は「面白くて説教くさくないもの。ドーンというものより、トンチの効いた日本人的な工夫を凝らしたものになる」と説明。選手からは「長すぎる」と指摘もあるため、開会式を3時間台に短縮する具体的な調整にも入る。面白くて短い。まさに「クールジャパン」を世界に発信し、新たな五輪・パラの開閉会式を創り上げる。【三須一紀】

 ◆野村萬斎(のむら・まんさい)本名・野村武司。1966年(昭41)4月5日、東京都生まれ。250年間続く狂言一家に生まれ、江戸前狂言の開祖とされた祖父の故6世野村万蔵(人間国宝)、父野村万作(同)に師事。3歳で初舞台。東京芸大卒。94年に萬斎を襲名。同年NHK大河ドラマ「花の乱」に細川勝元役で出演。主演した映画「陰陽師」「のぼうの城」で日本アカデミー賞受賞。

 ◆山崎貴(やまざき・たかし)1964年(昭39)6月12日、長野県松本市生まれ。阿佐ケ谷美術専門学校卒。00年「ジュブナイル」で映画監督デビュー。失われた人情などを描いた05年「ALWAYS三丁目の夕日」で、日本アカデミー賞最優秀作品賞など14部門を受賞、日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞獲得。13年「永遠の0」で日本アカデミー賞最優秀作品賞など8部門受賞した。

 ◆佐々木宏(ささき・ひろし)1954年(昭29)10月18日、熊本県八代市生まれ。慶大卒業後、77年に電通入社。26年間在籍し、クリエーティブ局長を経て、03年に独立し「シンガタ」を設立。JR東海「そうだ 京都、行こう」、富士フイルム「お正月を写そう」などの長寿CMを制作。他にもソフトバンク「犬のお父さん」、サントリー「BOSS」の「宇宙人ジョーンズ」などを手がけた。