今年の国会論戦は、安倍晋三首相や閣僚らによる、はぐらかしや「論点ずらし」の手法が目立った1年だった。政権の巧妙な論点ずらしをご飯の食べ方にたとえ、「ご飯論法」の言葉が世に出るきっかけをつくった法大キャリアデザイン学部の上西充子(みつこ)教授に、話を聞いた。主な一問一答は以下の通り。

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-国民の目が、前より見抜きやすくなったと感じる理由は何ですか

上西氏 「ご飯論法」の言葉と、パンとごはんのたとえだけでは、まだ実際に読み解けるところまではいかないと思います。ただ、日ごろから国会審議を見ている人が、気づきやすくなったと思うからです。野党もその視点でやっているから、答弁のすれ違いに気づく。国会の中でも「これはご飯論法です」と、指摘できるようになったと思います。

そういう意味で、(政権の説明は)だんだん、ごまかしがきかなくなってきている。反対の話を聞かずに有無を言わさずに押し切り、問題にふたをするという政権の姿勢は、「ご飯論法」を手がかりにして、かなり表面化してきたと思います。そんな政権ということがだんだん有権者に見えてくれば、「安倍さんしかいない」といっている場合ではないと、認識が変わってくるのではないでしょうか

-最初は安倍首相の「ご飯論法」が、官僚、閣僚につながっていった感じでしょうか

上西氏 一部の利害のために、無理やり法案を通そうとする。そういう姿勢が政権全体にあり、それが大臣の答弁にも現れていると思います。でも、大臣の答弁は官僚が書いている。官僚も政権の言いなりになっていることになります。

中立、公正な資料や答弁書をつくるべき官僚が、そこまでやらないと生き残れないような、締め付けがあるのかもしれない。根は深いと思っています。

大臣や総理大臣を替えたら済む話でもなく、政府の姿勢の劣化だと思います。

-「ご飯論法」は、年末の新語・流行語大賞のトップテンに入りました

上西氏 ノミネートの段階では、「ノミネートされたが知らない言葉」の2位に入ったこともありました。そこで、メディアの報道で説明をしてもらうことができたのは、大きかったと思います。

-国会審議のやりとりを街頭などでみせる「国会パブリックビューイング」を開催しています

上西氏 これまで街頭の上映会を25回、室内でも11回、行いました。日々、国会を監視しないとまずいと思ってほしい。米国のように、自分たちで政治について語って行動するようなことは日本にはありませんが、本当はそれくらいの「近さ」が必要だと思います。多くの人が国会に注目し、自分の言葉でも語れるようになれば、今の政権与党は好き勝手できないと思います。

-社会に一石を投じた1年でしたか

上西氏 「裁量労働制」の審議の時から、もう投げまくりです。加藤前大臣は、ずらし方が巧妙でした。高圧的なところを感じさせないだけに、悪質さを感じました。そんな実態をきちんと自分で考え、見極める。そういう人が増えてほしいと思います。