東京電力福島第1原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪に問われた東電旧経営陣の論告求刑公判が26日、東京地裁(永渕健一裁判長)で開かれ、勝俣恒久元会長(78)と武黒一郎(72)、武藤栄(68)の両元副社長に禁錮5年が求刑された。

争点は(1)3被告が大津波を予見できたか(2)対策を取れば事故は防げたかの2点だった。検察官役の指定弁護士は、武藤元副社長が08年7月31日に、最大15・7メートルの大津波が襲うとの試算結果を得た東電の担当者から防波堤などの建設を進言されていながら「土木学会の判定に委ねる」などと返答し、その後、同学会の報告を求めなかったと指摘した。

武黒元副社長についても、翌09年2月に御前会議と呼ばれる会議で、当時の原子力設備管理部長だった吉田昌郎元福島第1原発所長(故人)が「14メートル超の津波の可能性を言う人がいる」と発言したのを聞き、同5月に同氏に報告を求めて以降は具体的な情報収集を怠ったなどと指摘した。

勝俣元会長についても、吉田氏の発言を聞きながら関心を示さなかったことに対し「何の疑問も不安も抱かなかったのが不思議」と指摘。3人ともに、同氏や社内の土木調査グループなど担当各所から、何度も大きな津波が来ると指摘され、情報を耳にしながら、やるべきことをしていなかったなどと厳しく批判した。

3人は求刑の際含め、反応を表に見せず、手元の資料に線を引くなど粛々と検察官役の指定弁護士の話に耳を傾けた。その中、傍聴席からは「勝俣、寝るな!!」とヤジが飛ぶ一幕もあった。また求刑の際には「有罪!」などと声が上がった。【村上幸将】