児童虐待の増加は、18年も止まらなかった。警察庁によると、虐待を受けた疑いで児童相談所に通告された子どもは、今年上半期で3万7113人と過去最多を更新。東京・目黒では3月、虐待のために衰弱した船戸結愛ちゃん(当時5)が死亡し、その後、継父と実母が逮捕された。冬はベランダに出され、最期は体重約12キロだったという結愛ちゃん。悲劇の再発防止策は十分なのか。そして一般市民にできることとは。専門家の声を聞いた。

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都と警視庁の再発防止に向けた協定は万全といえるのか。児相事情に詳しい、子ども虐待ゼロを目指すNPO法人シンクキッズの後藤啓二代表理事(59)は「何もしないよりはマシ。しかし評価はできない」と厳しい見方だ。

後藤氏は協定の欠点として「虐待と認められなかった『虐待非該当の事案』が、情報共有対象から外されている」ことをあげる。「家庭訪問で判断できない場合も多い。顔にあざや傷がないから虐待はないと判断したら、腹など見えない箇所を殴られている子は救えない。過去には、児相が『虐待なし』としながら子どもを救えなかった事例も複数ある」と再発の危険性を指摘した。

後藤氏は児童福祉司の強化についても、専門性を重視する児相とは異なる見解だ。「児童福祉司は一般人目線でいい。私は専門家、という傲慢(ごうまん)な意識で案件を抱え込む方が危ない」とした。

後藤氏は虐待減少への道として、表面化していない虐待の撲滅と、警察との連携、の2点を示す。「協定締結後も、都から警視庁への提供案件数は毎月100件未満。児相が把握した案件の1、2割ではないか。虐待の『疑い』がある全ての案件で連携する必要がある」と訴えた。