広島県警広島中央署(広島市中区)で特殊詐欺事件で押収された現金8572万円の盗難が発覚した事件で5日、県警は職員らが現金を出し合って全額補填(ほてん)する前代未聞の方針を固めたことが分かった。

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元兵庫県警刑事で警察ジャーナリストの飛松五男氏(74) 警察組織全体の信頼を失う極めて異例の事態と言えます。広島県警で現金を徴収されるといわれる所属長以上の警視正、警視は70人ぐらい。内訳は警視正が約10人、警視が約60人とみられます。これに加えて県警の全職員が加入する互助会、OB組織からもお金を出させて全額を集めるということですが、これは不祥事の慰謝料じゃないんですよ。「とかげの尻尾切り」のように終わらせられる問題ではありません。

私は事件発覚後の昨年1月に広島県警を取材しています。状況的に内部犯行と思われますが、事件発覚からやがて2年が経過しようという今になっても、何ら明らかになっていない。まず第一に、盗まれた多額の現金は重要な証拠品です。警察では証拠物は厳重な管理下に置かれ、何重もの厳しいチェックを行うのが基本中の基本です。それが警備厳重な金庫から盗まれた。実に不可解極まりなく、証拠隠滅に等しい事態です。

県警全体で責任を負うようですが、広島中央署には特別課徴金を課したほうがいいぐらいでしょう。このままでは「身内に甘い」と言われてもしょうがない。