囲碁の女性棋士で史上3番目に年少の12歳9カ月でプロ入りすることが決まった、小学6年の上野梨紗さん(12)が15日、都内の日本棋院で報道陣の取材に応じた。

上野さんは、同じ4月1日に最年少の10歳0カ月30日で初段になる“同期”の仲邑菫さん(9)について聞かれ「菫さんに負けないように頑張っていきたい」と笑みを浮かべた。

梨紗さんは、姉の愛咲美(あさみ)女流棋聖(17)を伴った会見の序盤こそ緊張の面持ちを浮かべたが、小さな口からはよどみなく決意の言葉が出てきた。目標は「女流タイトルを獲得できるような棋士になること」とハッキリと答えた。

東京出身の梨紗さんは、藤沢一就八段の「新宿こども囲碁入門教室」に通う姉の影響で4歳で囲碁を始め、小学2年でプロ候補生の院生となった。そして日本棋院が年に1回行う女流特別棋士採用試験の本戦で、9人中トップの7勝1敗の成績でプロ入りを決めた。

一方で、日本棋院が新設した「英才特別採用推薦棋士制度」でプロとなった、3歳年下の菫さんにスポットライトが当たっている。初段として同期入段する大阪在住の菫さんとは“東西ライバル”の構図となり、質疑応答では菫さんに関する質問が相次いだ。対局の可能性も? と聞かれると「菫さんに負けないように、すごい、頑張っていきたい」と笑みを浮かべた。

菫さんが1月6日に井山裕太棋聖と記念対局したのもチェック済みで「井山先生と打っていたのは、すごい強いなと思いました。たくさん、刺激を受けました」と口にした。一方でライバル意識は「今はそこまでではない」と言い切った。

小学6年ながら、自分の今の実力を冷静に見詰めた。会見で大淵盛人常務理事が世界一奪還を目標に掲げる中「まずは(国内の)女流タイトルを取ってから考えたいと思います」と語った。菫さんも世界屈指の囲碁強国・韓国で修業を続けており、世界は意識するか? と聞かれても「今は、まだ意識はしていないですけど、将来は国際戦で結果を残したい」と答えた。

師匠の藤沢八段が「ボクシングで言うとジャブやフックを打って前に出ていくファイター」と評する戦闘型の囲碁を打つ。その上、採用試験前日に大好きなKポップを聞いて踊り、姉の愛咲美女流棋聖を驚かせた強心臓の持ち主。プロ棋士とは何かと聞かれると「ファンの方々に面白い囲碁を見せられるような人」と明確に答えた。【村上幸将】

◆上野梨紗(うえの・りさ)2006年(平18)6月24日、東京都中野区生まれ。囲碁を打つ祖父の影響で、姉の愛咲美女流棋聖が通い始めた「新宿こども囲碁入門教室」で4歳で囲碁を始めた。17年7月にタイで開催された第34回ワールドユース囲碁選手権ジュニアクラス(12歳以下)で3位入賞。12歳9カ月の入段(プロ入り)は、女流では10年に11歳6カ月で入段した藤沢里菜女流本因坊(20)に次ぐ3番目、男性棋士を含めると、68年に11歳9カ月で入団した趙治勲名誉名人に次ぐ4番目の年少記録となる。