国や大阪府、大阪市の補助金計約1億7000万円をだまし取ったなどとして詐欺と詐欺未遂の罪に問われた学校法人「森友学園」の前理事長籠池泰典(本名・康博)被告(66)と妻諄子(じゅんこ=本名・真美)被告(62)の初公判が6日、大阪地裁(野口卓志裁判長)で開かれた。

森友学園問題を当初から取材してきた、大阪日日新聞論説委員で記者の相澤冬樹氏(56)が、籠池夫妻の初公判を斬った。

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籠池夫妻は、のっけから検察と国にけんかを売った。いや、彼らの感覚からすれば「売られたけんかを買った」のだろう。

弁護士とともに裁判所に姿を現した籠池前理事長。報道陣のカメラに囲まれても悠然としたその姿は、自分の主張に確信を持っているあかしだろうか。裁判では冒頭、「国策捜査、国策逮捕、国策勾留は絶対許せません」と宣言した。補助金事件は、国会などで問題になっていた国有地の大幅値引き売却から目をそらし、自分たちの口封じをするための国策捜査なのだと。検察側は「裁判と無関係だ」と発言を制止しようとしたが弁護側が反論。いきなり波乱含みで裁判は始まった。弁護側は起訴された内容の多くについて無罪を主張。最後に「権力者の意向を忖度(そんたく)せず、厳格に法を適用する司法であるかが問われている」と指摘した。

もちろん検察側も有罪を勝ち取るために万全の構えだ。夫妻が共謀して虚偽や水増しの申請により多額の補助金をだましとったと主張した。籠池夫妻と検察のガチンコ対決が法廷で幕を切った。決着には時間がかかるが、「国策捜査」との主張がどこまで認められるのか、世の注目を集めることは間違いない。

だが私たちは忘れてはいけない。補助金事件は森友事件の本質ではない。本質は国有地の8億円もの大幅値引き売却だ。安倍昭恵首相夫人が名誉校長を務めていた小学校のための…。財務省の説明は根拠に乏しく、関連する公文書は改ざんされていた。だが検察はこれら一連の問題について財務省の関係者らを全員不起訴にした。値引き売却はなぜ? 公文書改ざんは何のため? 命を絶った近畿財務局職員は何を言い残したのか? 事件の真相解明が欠かせない。