参院選公示後初の週末となった6日、各党は激しい舌戦を展開した。一方、東京選挙区(改選6)では、元参院議員の野末陳平氏(87)が、24年ぶりの国政復帰へ、静かに動き始めた。

議員時代に「税金党」代表も務めた年金、税制のプロ。「老後2000万円」問題をめぐる与野党双方の対応に失望し、医師の反対を振り切って出馬に踏み切った。「年金制度はつぶれることはない」と語る野末氏は「老後不安があおられている。高齢者の声を代弁して、国会に正論をぶつけたい」と、気勢を上げた。

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野末氏が参院全国区で初めて議席を得たのは、71年(昭46)。同期はあの立川談志さんだ。4期24年務めて95年に引退したが、約四半世紀ぶりの国政再挑戦。きっかけは「老後2000万円」問題への疑問だった。

金融審議会の報告書について「月5万円の赤字になるので預貯金ではなく投資をと促す、証券会社の宣伝のためのもの。それなのに2000万円の数字だけがひとり歩き。ただでさえ老後が不安な人を、大不安に落とし込んだ」と話す。

与野党の対応も不満だ。「野党は『赤字だ、年金はダメだ』と騒ぐが、まったくピント外れ。政府や自民党も、今後の年金制度をきちんと説明できるチャンスなのに、選挙が怖いから逃げまくり、麻生さんは報告書も受け取らず、さらに混乱させた」。この問題が出るまで国政再挑戦など考えなかったが「おいおいチンペイ、本当かよと、周りがあまりにもざわついちゃってさ。高齢者の声を結集して、正論を国会にぶつけていく。その代弁者になりたい」と出馬を決意した。

税や年金の専門家。高齢者と現役世代とのアンバランスさを指摘しつつ「年金制度がつぶれることはない」と話す。その上で「若い人や中堅世代の負担があるから、高齢者はまずますの生活が送れる。将来の日本を考えると今、手を打たなければ。消費税10%もやるしかない」と、考える。

不整脈があり、医者から「激しい運動禁止」の診断書も出たが「そんなの隠しちゃったよ」と笑う。「連呼しない」「ビラは配らない」「演説より対話」がモットー。テーマソングの「チン・チン・ルンバ」を選挙カーで流しながら、有権者との対話に回る予定だ。

最近の政治家や官僚は、自身の議員時代に比べ「すごく劣化した」と嘆く。「安倍政権は1強になり、周囲は全部ごますりになった」。ゆるんだ政界へのカツでもある再挑戦。ポスターには「最後のご奉公」と書き込んだ。【中山知子】

◆野末陳平(のずえ・ちんぺい)1932年(昭7)1月2日、静岡県生まれ。早大卒。放送作家やタレントを経て71年の参院選全国区に出馬。落選したが、繰り上げ初当選。ミニ政党ブームの中「税金党」を立ち上げ、同党は参院で議席を得た。税金や年金をわかりやすく解説する評論や執筆活動でも知られた。