東京に「維新」の旗は立つか-。日本維新の会は、さきの大阪府知事&市長ダブル選を完勝し大阪では勢力を広げるが、全国的な広がりは欠いたままだ。

今回、激戦の東京選挙区(改選6)に、元都議の音喜多駿氏(35)を擁立。首都の議席獲得を目指す。東京は前回、約67万票で議席を得た「れいわ新選組」の山本太郎氏が比例代表に転じ、無党派層を中心にした「太郎票」が“漂流”。音喜多氏は「浮動票をつかみ取りにいきたい。維新にとっても試金石の戦い」と話した。

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「ニッポ~ン!維新の会!」。音喜多氏の街頭演説は、党名の連呼も、硬派な維新のイメージと違い、ポップな感じだ。比例代表に出馬した元都議で海城中・高の先輩、柳ケ瀬裕文氏(44)とともに「音喜多さん」「何でしょう柳ケ瀬さん」と、漫才コンビの掛け合いのように話を進める。音喜多氏は「私たちには組織がなく、無党派の方にどう投票していただくかがすべて。少しでも興味をもってもらいたい」と話す。

「改革姿勢が同じ。1人では力不足でできないことも、維新としてならできる」(音喜多氏)と考え、維新から出馬。党の一丁目一番地「身を切る改革」を訴える。柳ケ瀬氏と2人で「議員報酬も議員定数も、3割カット!」と声をそろえ、消費税率10%にも反対を唱える。

ダブル首長選に堺市長選。大阪では選挙連勝の維新だが、東京での知名度は低く、大きな課題だ。17年衆院選は、希望の党との候補者すみ分けで比例代表にしか擁立できず、全敗。維新の馬場伸幸幹事長は、音喜多氏らの擁立について「東京でのろしをあげないと、中央集権体制打破へのスタートは切れない。ベンチャー政党なので多くの落下傘候補を擁立してきたが、2人には都議などの経験があり、地に足がついている。有権者にもご理解いただきやすいのでは」と話す。

しがらみのなさを強調する半面、組織力は乏しい。音喜多氏は「1人でも多くの方と会うしかない」と、1日の演説は、時に20カ所に迫る。東京では、前回約67万票あった「山本太郎票」の行方を各党が注視しているが、最近の情勢調査で当落線上を争う音喜多氏も「浮動票の行き場がなくなったということ。つかみ取りにいきたい。その意味では1つの機会」と話す。

13日は、松井一郎代表も交えて遊説した。都議を辞し、北区長選で敗れ、背水の陣の音喜多氏。東京の議席獲得という党の悲願も背負う戦いだ。【中山知子】