おもてなしは「ラグビースイカ」-。ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の花園ラグビー場(大阪府東大阪市)での初試合となるイタリア対ナミビア戦が22日、行われた。

試合後、花園ラグビー場に隣接する花園中央公園野球場に設置された「ファンゾーン」では、東大阪市の農業、松原功典(こうすけ)さん(86)が生産したラグビーボールの形に似たスイカが海外のファンらにふるまわれた。「集大成がW杯」という松原さんの悲願がかなった。

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花園ラグビー場に隣接する花園中央公園野球場に設置された出場国のグルメが楽しめるブースがある「ファンゾーン」。東大阪市のブースには約40個の楕円(だえん)形のスイカがズラリと並んだ。

イタリア-ナミビア戦が終わった午後4時すぎ、米国から来た女性が駆け寄ってきた。「アメイジング!(すばらしい)」。楕円のスイカを手にとり、何枚も写真を撮影した。松原さんが「ラグビースイカ」をふるまうと、「ベリー、スイート(とっても甘い)」と顔をほころばせた。

イタリアから来たエンジニアのディエゴさん(46)は「イタリアにも大きくて丸いスイカはあるけど、こんな形のスイカは見たことはない」と興味津々。栽培方法を尋ねられた松原さんは「海外の人にも喜んでもらって、ほんと、うれしい」と声を弾ませた。

花園ラグビー場から直線距離で約200メートルの畑で20年以上、楕円形をしたさまざまな野菜を作り続けている松原さん。東大阪市の大阪英田農協(現・JAグリーン大阪)で43年間勤務し、退職後は農家に。「農業を通じて花園のあるラグビーの街・東大阪市を盛り上げることはできないか」との思いからカボチャなどの「ラグビー野菜」に取り組んできた。

「これまでやってきたことの集大成がW杯」。W杯の“花園開幕”に合わせて、海外のラグビーファンに「ラグビースイカ」を味わってもらうため、通常7~8月の「ラグビースイカ」の収穫時期を9月にずらすことに「トライ」してきた。

種まきの時期をずらしたり、畝(うね)の高さを調整し、余分な水分が入り込まないように配慮するなど、多くの時間を費やしてきた。その成果がこの日の「おもてなし」だった。当初は「ラグビースイカ」の収穫は試合前日21日に予定していたが、「少しでも、おいしく味わってほしい」と試合当日の早朝に収穫した。

1カ月遅れの「ラグビースイカ」。地道に積み重ねてきた「トライ」が実った松原さんは「W杯期間中に花園を、東大阪をもっと世界にアピールしたい。盛り上げに少しでも貢献できたら幸せ」。86歳のW杯が始まった。【松浦隆司】

◆「ラグビースイカ」 品種は「ひとりじめSmart」。小玉スイカの形が楕円形の中でも特に縦に長く、重さは2~3キロ。黒しま模様が濃く食感がしっかりしている。松原さんの畑では、スイカの他に楕円形のカボチャ、キャベツ、ナス、トマト、メロンなどを栽培している。