安倍晋三首相は2日の参院本会議で、「桜を見る会」をめぐる疑惑について質疑に応じたが、ないないづくしの「逃げ恥」作戦を展開した。

経営破綻した「ジャパンライフ」の元会長を招待したとされる疑惑では、個人的な関係を否定。招待者名簿の電子データ復元を不可能としながら、今後の名簿保存の見直しには言及するなど、ちぐはぐな主張も目立った。9日閉会の今国会での首相答弁は、この日が最後だが、多くの疑惑は残ったまま。「幕引き」には至りそうにない。

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首相VS野党の12日ぶりの「桜」対決は、消化不良のまま幕を閉じた。

「桜」問題では、預託商法が問題視されて経営破綻した「ジャパンライフ」の山口隆祥元会長と首相の関係が、新たなテーマに浮上。野党は、元会長が首相推薦枠で招待されたのではないかと問題視。元会長が15年に招待された際の招待状を会社の宣伝に悪用し、被害拡大を招いたとされることなど、多角的に首相の認識をただした。

首相は、元会長との関係について「多人数の会合で同席したことまでは否定しないが、個人的な関係は一切ない。妻も面識はない」と否定。招待状送付については「個人に関する情報で、招待したかも含めて従来、回答を控えている」と、答えなかった。その上で、一般論として「企業や個人の違法、不当な活動に利用されることは決して容認できない」と述べた。

招待者の名簿について、政府は電子データも含めて破棄ずみと主張する。10月の国会審議で「桜」問題を取り上げた共産党の田村智子氏は「やましいことがないなら総理の責任で電子データを復元させ、名簿をすべて明らかに」と突っ込んだが、首相は「データは端末に保存されておらず、バックアップデータの保存期間後は、復元は不可能と報告を受けている」と、人ごとのように返した。

元会長の招待状に記された「60」という数字が、首相の推薦者を示す数字ではないかと問われても「現時点で、内閣府はこれらの情報を保有していないと報告を受けている」と主張。首相は、質問者が違っても同様の質問に同じ答弁を繰り返し、野党が必要として求める名簿は廃棄済みとしながら、今後の名簿の保存期間見直しには言及した。

本会議は一問一答ではなく、首相の「言いっ放し」で終了。答弁漏れの指摘も受けたが、首相が再答弁に立つことはなかった。与党が国会を延長しなければ、首相と野党の対決はこの日が最後。首相は、「逃げ恥」でこのまま乗り切れるのだろうか。【中山知子】