乗客が新型コロナウイルスに感染して日本の検疫下にあるクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で8日、新たに3人の感染者が出た。香港人の男性乗客(80)の感染が1日、下船した香港で発覚し、3日に体調不良を自己申告した273人の検体を調べ、判明した感染者は64人となった。

同船は8日朝、船内で飲む真水の精製、船体を安定させる重しの目的で船底に積むバラスト水の管理、船内で処理した汚水の排水など、運航に必要な作業を行うため、接岸していた横浜・大黒ふ頭を離れて外海に出た。同日午後の船内アナウンスでは、高熱を出していた米国籍1人、中国籍1人から感染が確認され、2人は船が外海に出る前に病院に搬送されたことが乗客に知らされた。

船が大黒ふ頭を離れる際には、厚生労働省から派遣された16人の医師を含む28人の医療チームが乗船したという。船内では、乗客からリクエストを受けた医薬品の仕分け、配布、高熱を出した乗客の往診をするという。この日の午前の船内アナウンスでは、体調不良を感じる人が多数足を運び、船内の医療センターが混雑しているため、診療時間を確保した上で、乗客を呼び出す旨、乗客に説明がなされており、医療チームはその力にもなりそうだ。7000枚のマスクも供給するという。

また午前の船内アナウンスでは、5日午前に全乗客に客室での待機が義務付けられてから4日目を迎え、情緒が不安定になっている乗客がいることを踏まえ、船内にカウンセリングホットライン「心の相談窓口」を設置したことも発表された。

6日から始まった、乗客を複数のグループに分けて時間限定で行う船内での散歩は、この日も実施された。5、6階の海側の客室に滞在する乗客が対象となり、午前10時から1時間、7階デッキを散歩した。埼玉県から参加する60代の男性は、4日ぶりに客室を出て外の空気を吸い「外海に出て、東京湾の風景を見ることが出来て良かった」と喜んだ。

客室での待機が4日目で、乗客のストレスと運動不足は募る一方だった。男性は「妻は『せっかくだから』とウオーキングを行い、7階のデッキまで5、6回は往復していました。気分が全然違う」と、客室の外に出た開放感を繰り返し、口にした。

船側では今後、客室での待機を通達した5日以降、全乗客に認めていない喫煙を、散歩の際にデッキで出来るよう、検疫当局に働き掛けを行うのと並行して、ニコチンガムの提供をする旨、船内アナウンスで告知した。

船は翌9日午前に大黒ふ頭に再接岸する予定だ。【村上幸将】