カタカナ語が氾濫している。新型コロナウイルス対策を話し合う政府専門家会議では使われていたが、「ワイズスペンディング」「都民ファースト」など横文字好きで知られ、「政界のルー大柴」と呼ばれる小池百合子都知事が緊急会見した3月25日以降、一気にヒートアップ。「オーバーシュート」「クラスター」「ロックダウン」など従来の使われ方を離れ、新型コロナウイルス用語として日常的に飛び交うようになっている。

こんな状況に河野太郎防衛相は「クラスター 集団感染 オーバーシュート 感染爆発 ロックダウン 都市封鎖ではダメなのか。なんでカタカナ?」とツイートし、3月26日には参院外交防衛委員会で「私の周りにも『何を言ってるか分からない』という声がある。万人が分かりやすい言葉でやるべき」と答弁した。SNSでは「ルー大柴にしか伝わってないと思う」との声も書き込まれている。果たしてルー大柴(66)はカタカナ語問題をどう思っているのか。

本紙の直撃に「私もファーストタイムに知る言葉ばかりでした」と明かしたルーは「集団感染、感染爆発、都市封鎖…ジャパニーズだとインパクトが強すぎるとテレビでリッスンして納得」と答えた。そしてルー語で「『仕事でミスして疲れちゃった』というより『ジョブでミスしちゃってタイアードなの』って言う方がソフトになりません?」と付け加えた。

事態が深刻なだけに、広がる不安や閉塞(へいそく)感をマイルドにしてくれる効用がカタカナ語にはあるというのだ。「確かに私にも分かりづらいけど、気遣いなんだと思うと、悪くはないのかとシンクします」とルー。小池都知事は本当にそこまで気遣って会見しているのか!?【中嶋文明】

■日本語にない「バー」などの音に注目引く効果

◇国語辞典編さん者の飯間浩明さん 漢字とカタカナにはメリット、デメリットがあります。漢字は目で見たときに分かりやすい。一目瞭然で意味が分かります。ただ、「集団感染」なら「う」「ん」「ん」「ん」となるように、似たような音が多く、耳で聞いたときに分かりづらい。一方、外来語は「オーバーシュート」の「バー」など日本語らしくない音があるので、耳で聞いたとき、新しい用語と分かります。目で見たとき目立つのも利点です。結果的にはカタカナを使ったことで話題を集め、注目される効果はあったと思います。問題は症状が重くなりやすい年配者に不親切なことです。何のことか分からず、うまく情報が届かない。河野防衛相が言うことももっともだと思います。