新型コロナウイルスの感染拡大に便乗した「おれおれコロナ詐欺」の増加が懸念されている。親族などに成りすまして現金をだまし取る特殊詐欺の新たな手口として、新型コロナウイルスを悪用するケースが増えるとみられ、相談が寄せられている国民生活センターは「まだ氷山の一角だと思うが、危機感を持っている。積極的な注意喚起を行う」と警鐘を鳴らしている。

同センターへの実例報告では、3月、80代女性に息子を名乗る男から「会社の上司に借りたお金を返して」と電話があった後、上司を名乗る男からも「新型コロナウイルスの騒ぎでお金に困っている。すぐに返してほしい」と電話。女性は指定場所で若い男に現金100万円を渡したという。

緊急事態宣言による外出自粛要請で自宅に滞在する人が増えたことで、詐欺グループからの電話に出やすく、巧妙な話術にだまされる可能性は高い。同センターでは「詐欺グループは過去にも熊本地震、西日本豪雨、令和の改元などに便乗してきた。今回も、新型コロナウイルスの感染拡大につけこむことが予測される」と、警告する。

同センターに寄せられた新型コロナウイルスに関する相談は、1月から今月8日までに計1万1497件。2月は2253件、3月は7963件だったが、今月1日から8日だけで1129件と急増している。

自治体のコロナ対策室を名乗り「助成金を銀行口座番号に振り込みますので番号を教えてください」「新型コロナウイルスの検査が無料で受けられる。マイナンバーが必要。これから自宅に行く」と話すなどの不審な電話が相次いでいる。悪質詐欺のパンデミック(爆発的拡大)阻止へ、警戒が必要だ。【大上悟】

◆特殊詐欺 2月に警視庁が発表した昨年1年間の振り込め詐欺など特殊詐欺の被害総額は301億5000万円で、前年比21・3%減と、5年連続で減少した。被害件数も1万6836件(前年比5・6%減)と2年連続で減少。おれおれ詐欺が減る一方で、キャッシュカードを盗む手口が大幅に増え、資産状況などを事前に電話で聞き出す「アポ電」は、昨年4月から12月までに9万1798件発生している。