新型コロナウイルス感染者が国内唯一ゼロ(6日現在)の岩手発、疾病から人々を守る妖怪「アマビエ」の最強コンビで未知なる敵を鎮める。半人半魚で江戸時代に「自身を描いた絵を見せると疫病にかからない」という伝説を残したアマビエ。鉄玉、お菓子、ステッカー、絵馬などの姿で現代によみがえり、緊急事態宣言下の日本列島で“守護神”として心の支えになる。 

  ◇   ◇    ◇   ◇   ◇

アマビエ型の高さ5センチ、幅2・5センチ、重さ160グラムの鉄玉(税込み1800円)が大ヒットしている。1848年(嘉永1)創業、奥州市の南部鉄器製造会社「及富」が販売。1日時点で1万個以上を受注し、発送まで最長2カ月待ち。やかんや鍋に入れて鉄分補給補助の効果もある。

鉄玉を考案した同社の菊地海人さん(36)はSNS上で「♯アマビエチャレンジ」のハッシュタグをつけ、絵、工芸品、食べ物などアマビエ関連の投稿が話題を呼んでいることに注目。「南部鉄器で作ったら興味を持ってくれるのでは」と制作過程を投稿し始めた。商品化は当初想定していなかったが、購入希望の声が高まり「不安な気持ちで過ごされている方に安心できる時間を届けたい。癒やしのきっかけになってほしい」と販売が実現した。

南部鉄器は外国人観光客にも支持される伝統工芸品。しかし、コロナ禍で業界全体の売り上げが2月頃から激減し、例年の5割ほどまで下落した。それでもアマビエが海外メディアで紹介され、認知度が高まり、同社通販では米国、カナダ、イギリス、フランス、台湾から鉄玉の注文がある。

1903年(明36)創業、一関市の菓子店「松栄堂」はアマビエがモチーフの上生菓子を完全手作り、個数限定で製造する。「早急に新型コロナウイルス感染が終息し安寧の日々が続きますように」と商品名は「安寧(3個=同987円、6個=同1953円)」。同市地主町の総本店、中野店、一関イオン店の3店舗と通販で販売している。

お土産グッズデザインを主に手がける遠野市の「柳の下工房」では、好きなものに貼って人に見せることができるアマビエステッカー(同150円)とお守り代わりになるミニ絵馬(同400円)を制作する。

コロナ終息へ-。岩手発の商品が奇跡を起こすきっかけになる。【山田愛斗】