ラクダ科の愛らしい動物ラマが、新型コロナウイルス克服の救世主になるかもしれない。ニューヨーク・タイムズ紙は6日、「ラマがコロナウイルスでヒーローになる」の見出しで、ラマの抗体がコロナウイルスの最大の特徴であるスパイクタンパク質と呼ばれる突起に結合し、コロナウイルスが細胞に侵入するのを阻止することが確認されたと報じた。

ベルギーのヘント大と米国のテキサス大オースティン校の研究者が5日、医学・生化学分野で最も権威がある学術誌「セル」に発表した。ヘント大で飼育されているラマ「ウインター」(雌4歳)にSARS、MERSのスパイクタンパク質を6回注射し、体内に出来上がった抗体を使い、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質にも結合することを確認した。コロナウイルスはスパイクタンパク質が細胞に取り付き、侵入・増殖する。

ヘント大のサエレン博士(ウイルス学)は16年からラマの抗体に注目。ラマから抗血清をつくり、HIVウイルス、インフルエンザ、SARSなどに応用できないか研究していた。サエレン博士は「臨床で使用するまでには安全性の検証など、やらなければならないことはたくさんあるが、ウインターは将来、銅像になる価値がある」と話している。

▽水谷哲也東京農工大教授(人獣共通感染症) ラマの抗体は結合力が強く、安定性も高くて使い勝手がいいことから、注目されていた。結局は抗体が一番利くので、韓国では感染し、回復した人の抗体を使う研究が行われている。動物の抗体を使うことに抵抗感があるかもしれないが、ジフテリアやボツリヌスに対して馬から精製した抗血清を使った抗毒素製品が作られている。