永田町の“ジンクス”は生きていた。これまで、日本で五輪が開催された年は必ず首相交代が起きてきた。

また子(ね)年も首相交代が繰り返されてきた。延期された東京オリンピック(五輪)が開催予定だった今年はその2つのジンクスが重なる年で、安倍晋三首相の辞意表明で、図らずも歴史が繰り返されることになった。東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)は五輪招致からの支援に感謝し「総理を退かれても引き続きご支援をお願いするとともに、快復を祈念申し上げます」とコメントした。

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これまで日本で五輪が開催された年には、必ず首相交代が起きた。

▼64年(昭39)・東京五輪 池田勇人首相が9月に入院。東京五輪閉会式の翌日の10月25日に退陣を表明。11月に安倍首相の大叔父、佐藤栄作首相が誕生

▼72年(昭47)・札幌五輪 6月に佐藤首相が退陣表明。7月に田中角栄内閣が誕生。この年は子年

▼98年(平10)・長野五輪 7月12日の参院選で自民党が敗北し、橋本龍太郎首相が退陣。小渕恵三首相が誕生。その小渕氏は在任中の00年4月に病に倒れた

さらに子年のジンクスもある。戦後6回の子年のうち5回で、首相交代が起きている。唯一交代がなかった84年にも、自民党内で権力闘争が起き、政変の年のイメージが強い。

▼48年(昭23) 片山哲内閣の総辞職を受け、3月に芦田均内閣が発足。芦田内閣も同年10月に総辞職し、第2次吉田茂内閣が発足

▼60年(昭35) 安倍首相の祖父、岸信介首相が退陣し、7月に池田勇人内閣が発足

▼84年(昭59) 自民党総裁選をめぐり、中曽根康弘首相の再選を阻止するため二階堂擁立構想という騒動が起きた

▼96年(平8) 1月に村山富市首相が退陣し、橋本龍太郎首相に

▼08年(平20) 9月に福田康夫首相が退陣し、麻生太郎内閣が発足

そして2度目の東京五輪が開催されるはずだった、子年の今年。安倍首相は招致活動から積極的に取り組み、前回リオデジャネイロ五輪の閉会式ではゲームキャラクター、マリオのコスプレで登場するなど節目節目で存在感をみせてきた。東京五輪を自分のレガシー(遺産)としたい思いは強く、コロナ禍による延期論議では「1年の延期」を提案するなど、来年9月までの任期中の開催にこだわっっていたが、このタイミングで退陣を表明した。それだけに、永田町では、来年の五輪開催を不安視する見方も出始めている。【久保勇人】