新型コロナウイルスの感染リスクが高いとされている飲食店で、飛沫(ひまつ)防止のため黙って食べる「黙食」を呼び掛ける動きが広がっている。

東京・国分寺市の手打ちうどん・そば店「国分寺甚五郎」では、黙食を呼び掛けるポスターを1月19日から、入り口や店内に掲示している。店長の幸山貴さん(46)は「(飲酒をして声が大きくなった客に)言葉で注意するよりハードルが下がった」と明かした。ポスターを掲示する以前はポップ書きで「ダンディーに! エレガントに! 渋く決めてみてください」と呼び掛けていたが、伝わりにくさがあったという。幸山さんは「協力してくださる方が増えました。本当はワイワイと楽しい食事の方が良いが、こういうご時世なので仕方ない」と話した。

取材に訪れた31日の正午、店内は黙々と食べる客で満席となっていた。飛沫防止のため、アクリル板もテーブルの中央に置かれている。月に1回のペースで訪れているという夫婦は「少ししゃべりたくなりましたけど、麺のお店だから、ささっと出てこられますし、意識して話しませんでした」と語った。

また、東京・府中市の焼き肉店「ホルモンなかむら」では、黙食を続けた客に1皿1000円分のホルモンを、人数分無料にするサービスを行っている。挑戦者は、注文の際、店員に話しかける以外、退店まで無言で食事をすることが条件だ。店長の中村友和さん(44)によると、8日からサービスを開始して、現在まで10組が挑戦し9組が成功したという。挑戦した客は食事中、スマホのメモ機能やLINEを使い会話をしていたという。

黙食のポスターの発端は、福岡県福岡市のカレー店だ。「黙食にご協力下さい」「お食事中の会話が飛沫(ひまつ)感染リスクになります」と書かれたポスターを作成、SNSで拡散され話題となった。京都市も市のホームページで、飲食店や宿泊施設にポスターの掲示を促すなど、取り組みが全国的な広がりを見せている。【沢田直人】