東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の会長交代をめぐって混乱が起きた。森喜朗会長(83)が12日、女性蔑視発言の責任を取って辞任。同氏から後継指名されていた日本サッカー協会(JFA)相談役の川淵三郎氏(84)は、組織委の緊急会合で新会長候補を辞退した。 11日夜には報道陣の前で就任へ意欲を見せていたが急転。選考過程の不透明さを理由に同日午後10時過ぎ、組織委武藤敏郎事務総長らの説得により、白紙撤回を決断した。新たな会長候補には橋本聖子五輪相(56)が浮上している。

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政府は東京五輪・パラリンピックに対し「口も出さないが、金も出さない」が従来のスタンスだった。

変化があったのは昨年3月の大会延期決定時からだ。政府はサポートはするものの、積極的に関与しなかったはずだったが、政府関係者によると「当時、官邸筋では時々入ると言われた安倍晋三首相の『やる気スイッチ』が突然入った」と明かす。史上初の大会延期は、安倍氏とIOCトーマス・バッハ会長の電話会談を経て決定した。

追加経費圧縮のため、大会簡素化の話し合いでは、何としても経費削減に努めたい組織委員会とIOC(国際オリンピック委員会)の間で話し合いが難航。議論が進まない時期もあったという。大会関係者によると、万全の対策を求められるために経費がかかるコロナ対策については、会長だった森喜朗氏が橋本聖子五輪相に「国がしっかり主導権を持って取り組んでほしい」と、“政府主導”を要請したこともあった。

今回、官邸がプロセスが不透明と批判された森会長後任人事に難色を示し、日本サッカー協会相談役の川淵三郎氏会長案を白紙撤回させたとされる。官邸の東京五輪・パラへの直接的な介入は、安倍前首相時代から徐々に始まった流れでもあった。