宇宙航空研究開発機構(JAXA)は今秋、2008年以来、13年ぶりに宇宙飛行士候補者を募集する。

第6回目の今回は「多くの方に宇宙飛行士になる可能性を広げるため」として応募条件の一部が初めて緩和する方針で秋までに発表される。夢だった宇宙飛行士が、夢ではなくなる可能性が膨らんできた。

選抜試験は超難関だ。前回は963人が受験して合格者3人と、321倍の狭き門。国際宇宙ステーション(ISS)から2日に帰還した野口聡一宇宙飛行士(56)は95年(第3回)に一発合格した。だが、長期滞在中の星出彰彦宇宙飛行士(52)は「野口さんのようなスーパーマンもいれば、私のように3回目の試験で、ようやく宇宙飛行士に選ばれたという人もいます。もっと受けている人もいます」と振り返った。

前回の主な試験条件は日本国籍を有し、大学(自然科学系=理学部、工学部、医学部、歯学部、薬学部、農学部等)卒業以上、訓練時に必要な泳力(水着及び着衣で75メートル、25メートル×3回、10分間の立ち泳ぎ)、円滑な意思の疎通が図れる英語能力などがあった。

JAXAの現役宇宙飛行士7人は、大学や大学院で航空宇宙工学を専攻、医師、パイロットと、いずれも理系スペシャリストだ。それを「自然科学系学部以外の大学、大学院、短大、高専、専門学校卒業以上」も可能とする案や、泳力や教養面の条件も緩和や撤廃を視野に検討中だ。そうなれば理系以外の文系出身者や女性にも門戸開放となる。

JAXAは米国主導の月面基地や、火星探査など有人宇宙開発に参画するが、そのためには宇宙飛行士の育成や世代交代が必要だ。JAXAの現役宇宙飛行士の平均年齢は51・7歳と高齢化。今後は5年ごとに宇宙飛行士の定期募集を行う予定だ。「宇宙飛行士は1人では何もできない。お互いの長所を持ち寄って短所を補う、すばらしい仕事だと思っている。ぜひ頑張ってほしい」と星出さんは宇宙から新世代の宇宙飛行士候補生にエールを送った。 

 

◆JAXAの日本人宇宙飛行士 前身の宇宙開発事業団(NASDA)時代の83年から、5回の宇宙飛行士候補生の募集を実施して計11人の宇宙飛行士を採用し、宇宙へ送り出した。現役の宇宙飛行士は若田光一、野口聡一、古川聡、星出彰彦、油井亀美也、大西卓哉、金井宣茂の7人。