映画「宮本から君へ」(真利子哲也監督)の製作会社スターサンズが、助成金交付内定後に下された不交付決定の行政処分の取り消しを求め、文化庁所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会」(芸文振)を訴えた裁判で、東京地裁は21日、不交付決定処分の取り消しを命じる判決を下した。

映画が完成した19年3月12日、出演者のピエール瀧がコカインを使用したとして麻薬取締法違反容疑で逮捕。同6月18日に懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡された。製作側には芸文振から1000万円の助成金交付内定が通知されていたが、同7月「公益性の観点から適当ではないため」との理由で不交付決定通知書が送られた。

原告側は行政裁量の逸脱、乱用だと一貫して主張してきたが、東京地裁は「芸術団体等の自主性等を重んじる観点から、裁量権の範囲の逸脱またはその乱用にあたり違法」とし、主張を全面的に認めた。弁護団の伊藤真弁護士は会見で「文化芸術は世間や政治に忖度(そんたく)は無用ということ。画期的な判決」と評価。スターサンズの河村光庸代表は「うれしく思うが、文化芸術に対する公益性は何か、明確に答えてもらいたかった」と語った。【村上幸将】