高市早苗前総務相が8日、自民党総裁選(17日告示、29日投開票)への出馬を正式表明した。

菅義偉首相の後継を決める総裁選の出馬表明は岸田文雄前政調会長に続き2人目。正式に出馬すれば、2008年の小池百合子氏(現東京都知事)以来、2人目の女性候補となる。

女性初の総理総裁を目指す高市氏は記者会見の冒頭で「国の究極の指命は国民のみなさまの生命と財産を守り抜くこと。領土、領海、領空、陸資源を守り抜くこと。そして国家主権と名誉を守り抜くことだと考えている」と、自身の安全保障への姿勢を示した。

安倍晋三前首相の経済政策「アベノミクス」を継承する「サナエノミクス」を提唱した。「金融緩和、緊急時の機動的な財政出動、大胆な危機管理投資・成長投資」を3本の矢として、物価安定目標のインフレ率2%達成を目指す。またNHK改革を訴え、「家計の負担が非常に重くなっているNHKの受信料を引き下げるために、まずは営業経費の削減」と強調した。

高市氏の政治信条は安倍氏に近いとされ、憲法改正や対中国戦略も継承する。無派閥の高市氏は出馬に必要な国会議員20人の推薦人の確保がネックだったが、総裁選のキーマンである安倍氏の支援表明で一変。安倍氏の出身で最大派閥の細田派(96人)や、第2勢力の麻生派(53人)など他派閥も安倍氏の動向を伺う様相となっている。

麻生派所属で出馬へ向けて調整を図る河野太郎行革相も、現時点では盤石とは言えない。この日も麻生太郎財務相との会談を行ったが、麻生氏は全面支持を表明していない。派閥を横断した河野待望論が広がる中で状況は流動的だ。

岸田氏はこの日の会見で経済対策などを発表し、先行の利で積極的な発信を続ける。一方で森友学園への国有地売却を巡る公文書改ざん問題について、「再調査は必要ない」とトーンダウンした。当時の首相だった安倍氏の説明責任が再燃することに配慮した印象で安倍氏の存在が総裁選の行方を左右しそうな情勢だ。