ジャーナリストの伊藤詩織さん(32)が、15年4月に元TBSワシントン支局長の山口敬之氏(55)から性的暴行を受けたとして、1100万円の損害賠償を求めて起こした民事訴訟の控訴審(中山孝雄裁判長)の口頭弁論が21日、東京高裁で開かれた。この日は、伊藤さんと山口氏が出廷し、意見陳述を行った。この日で結審し、判決は22年1月25日に言い渡される。

伊藤さんは口頭弁論後、ショックが大きく、トイレに入って気持ちを立て直した後、報道陣の取材に応じた。「このように、この場に立ってお話しすることが出来るか分からなかった。だからトイレで数分、深呼吸をして、この場に立っています」と涙した。

報道陣から、山口氏の意見陳述を聞いての受け止めを聞かれると「(山口氏らが法廷に)入ってきて、私の中で裁判所という、私や一般市民にとって非日常の場所が、私の日常生活に何度も登場してきたということを振り返って…いました」と涙声で口にした。その上で「正直、彼(山口氏)が申し上げたことに対しては、まだショックが大きすぎるので、どう感じているか、どう話していいかは分かりません」と答えた。

山口氏が意見陳述の中で、すし店で飲酒してから翌朝5時に起床するまで記憶がないと証言しながら「デートレイプドラッグを盛られたと世界中に喧伝した」などと自らを批判したことについて「すごく驚いた」と口にした。その上で「正直、私が書いた『Black Box』(17年)や、この裁判中にも、例えばデートドラッグに関しても、私は『確証は持てないです』ということを、はっきり述べてから書いています。それにも関わらず、法廷の中で、私がそれを決定的なことだと主張しているとおっしゃっていました」と説明。「私は出来る限り自分の記憶、そして残された事実を分けて、これまで主張を繰り返してきたまでです」と繰り返した。

控訴審はこの日で結審し、判決は22年1月25日に言い渡される。伊藤さんは「私たちが、事件が起こってから6年間、述べてきたことは繰り返しになっていて、これ以上、主張することはないんです。誰しもが、同じ…もう思い出したくないこと、そして一番目に入れたくない人物を、目の前にしたいと思わないと思う。今日、それが私の身に起きました」と、涙ながらに語った。その上で「事件直後は、こんなこと、訴え出ない方が良いという言葉しか聞こえてこなかった。でも、こうやって皆様の前でお話しさせていただいているのは、やはり、このことについて、どちら側でもいいです。あなたの立っているところで、どう見えるか、何が出来るのか一緒に考えて欲しいからなんですね」と訴えた。

伊藤さんは最後に「このケースが1つのリトマス紙のように(なって)今後、司法がどういった結果をだすのか、皆様に目を向けていただきたいと思います」と訴えて、その場を後にした。