岸田文雄首相就任から27日後の今月31日に投開票される第49回衆院選は、19日に公示される。日刊スポーツでは最新情勢を、政治ジャーナリスト角谷浩一氏(60)に分析してもらった。首相は与党で過半数の「233議席」という低めの勝敗ラインをあげたが、野党共闘も整い、拮抗(きっこう)する選挙区も多い。情勢次第で自民党が単独過半数を割り込むケースも想定されるという。今後、情勢は変化する可能性があるが、決戦の審判は有権者が下す。

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コロナ禍で従来の大規模集会、ミニ集会、商店街を練り歩く桃太郎や握手といった選挙戦術が通用しない中、与野党の各候補はどんな選挙戦を繰り広げるのか。岸田初陣の最大の目的は菅内閣にうんざりした国民の疲弊した気持ちを受け止めることができるかということだが、自民党内の公認争いは公示直前まで熾烈(しれつ)を極めた。だがそれは二階俊博前幹事長が強引に候補者を押し込んだり、選挙区の保守分裂を放置してきたことが原因だ。そんな背景があることを前提に選挙情勢を見ていくと衆院解散後も与野党で出馬辞退や選挙区の移動などが相次ぐ。短期決戦をどう戦うか各党の選対関係者や各陣営は知恵をめぐらすことだろうが、突然選挙区を変えても戦えるだけの状況は与野党ともになく、準備ができたはずの政権選択選挙とは言い難い。コロナ感染者が激減し、その理由も解明できないまま国民は新たな生活をスタートさせるが、コロナ対策は確立されていない。

野党は4年間かけて野党共闘を推進してきた。ここまでたどり着いたことを成果とみるか、道半ばとみるかは有権者が審判することだが、最終的には自民党は30議席前後を減らすことになるだろうが与党で過半数を掲げる自民・公明両党の議席は過半数を上回る。一方、立憲民主党も現有戦力を大きく躍進させる。両党ともに勝利したように見えるが、本当の結果は来年夏の参院選で決着するといえよう。自民党は千葉、富山、石川、福井、岐阜、鳥取、島根、岡山、山口、徳島で圧倒的強さを見せるものの、東北から首都圏、新潟、加えて佐賀、鹿児島、沖縄などかつての保守王国と言われた九州地方で野党の善戦が目立つ。野党共闘の効果は出そうだ。激戦区は北海道、東京、広島、長崎などで、ことに河井夫妻1億5000万円買収事件で揺れた広島3区は公明党の斉藤鉄夫・国交相が選挙区で勝てるかどうかは注目だ。(政治ジャーナリスト)

◆角谷浩一(かくたに・こういち)1961年(昭36)4月3日、神奈川県生まれ。日大卒。テレビ朝日報道局などを経て現職。永田町、霞ケ関に幅広い人脈を持つ。現在はTBS系「ゴゴスマ」などでコメンテーターを務める。映画評論家の顔も持ち、年間250本を鑑賞。