日本一早いマジック点灯で知られる“猛虎の街”は、マジック(残り試合)「1」で無念の終幕を迎えた。尼崎中央3丁目商店街振興組合の寺井利一理事長(60)は、コロナ禍で苦しむ中、タイガースの躍進を励みにしてきた。「優勝は逃しましたが、矢野監督はファンを喜ばせるように、常に考えてくれていたのがずっと伝わりました」。厳しい日々に希望をもたらせたタイガースに感謝した。

物心ついた頃から生粋の阪神ファン。16年に解体された浜田球場にも足しげく通った。毎年、選手の背番号を全て記憶し、テストの点数は背番号の選手で友人と教えあったことも。「僕は田淵やわ~って言うときもあってね。当時、背番号22番やから22点とかあったね」と、笑い交じりに話した。寺井さんの人生はタイガースとともにある。

昨年来、新型コロナウイルスの感染拡大で、受けた打撃は、はかりしれない。寺井さんは「ノーベル商店劇場」という飲食店を営んでいるが、コロナ禍で、売り上げもコロナ以前の10分の1を下回ることもあった。緊急事態宣言が解除されても「お店を開けていても、やっぱりお客さんの足は戻らないですね」と現状も吐露した。

小学4年から阪神ファンで、7年前からマジック数ボードの数を減らす役目を担う、ペットスタイル阪神尼崎店店長の尾島晴己さん(57)も、感慨深い思いを抱く。デーゲームの日もナイターの日も、結果が決まるとすぐに脚立に登り、マジックを減らし続けてきた。「ここまで…マジックを減らすことができました」とつぶやいた。

惜しくも優勝は逃したが、CSを勝ち抜けば日本シリーズ進出の可能性もある。「まだまだこれからです。日本シリーズまで進んだら、また盛り上がると思います」。CSでは“マジック”を点灯させるかどうか検討中だが、日本シリーズまで進めば、再び“マジック点灯”に火が付きそう。日本一へ応援を続ける。【三宅ひとみ】