選挙戦は残り4日の終盤戦を迎え、岸田文雄首相が27日、激戦となっている東京選挙区のテコ入れのため街頭演説を行った。駆けつけた都内の5選挙区は、いずれも自民党候補と、野党統一候補による事実上の一騎打ちの構図で情勢は拮抗(きっこう)している。

全国区の注目区となった東京8区は、連続11選を目指す石原伸晃元幹事長と、立憲民主党の新人吉田晴美氏、日本維新の会の新人笠谷圭司氏も出馬した。JR阿佐ケ谷駅前を埋めた数百人の聴衆の前に岸田氏は「どの政党が、どの候補者が、みなさんの命や暮らしを守れるか。コロナ対応、経済対策、そして外交・安全保障を通じて、新しい時代を石原伸晃さんとともに切り開いていく」と、石原推しを繰り返した。

事実上の石原VS吉田の構図だが、石原陣営には焦燥感が漂う。「消費税がゼロだ、年金が倍だ、給料が倍だ。それをどうやってやるか、ということを彼らはまったく示さない。そんな人に私たちは政権を任せるわけにはいかないぞ」と、石原氏は野党共闘を痛烈に批判した。一方で石原支持の都議や選対幹部が次々と選挙カーの上からマイクで「本当に厳しい選挙」、「ここにお集まりのみなさんの一票では足りない」などと絶叫した。

終盤戦に入り、石原氏と吉田氏の競り合いが続く。

前回2017年の衆院選は6候補乱立の中、吉田氏は石原氏に約2万3000票差と迫った。今回、吉田氏は野党統一候補の看板を前面に、早朝から精力的な街頭活動を展開する。前回の共産党候補との得票を合計すれば石原氏に約1100票差まで肉薄する計算で、吉田氏の勢いに石原陣営の危機感は募る一方で、岸田氏出陣で形勢逆転を狙う。

自民党の大物幹部の落選となれば、岸田政権には大きな痛手となる。れいわ新選組の山本太郎代表が出馬表明直後に撤回するなど、ドタバタ劇による注目区から、与野党対決の象徴区へとヒートアップしている。【大上悟】