あなたは、どの駅弁が食べたいですか? JR東日本管内の駅弁NO・1を決める「第10回駅弁味の陣2021」が、今月30日まで開催中だ。まだまだ遠出や旅行は全面解禁とはいかないが、JR東日本の担当者は「駅弁とともに鉄道の旅を楽しんでいただきたい思いと併せて、ご自宅で駅弁を楽しんでいただき、旅への思いをはせて味わっていただきたい」。1885年(明18)に現在のJR宇都宮駅で誕生したとされる駅弁文化を未来に継承する思いも込めた企画。行楽の秋の一助になりそうだ。

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先月末の中間発表でエリア別得票数がもっとも多かった南関東だが、意外にも頂点はない。トップを走るのはリニューアルして誕生の「深川めし」。製造元の日本ばし大増(東京)担当者は「あさりはふっくらと仕上げられるように何度も研究を重ねた。大将軍をとって、東京を代表する名物駅弁として多くの方にお召し上がりいただくことが喜び」。最多6品を出展のリエイ(マンヨーケン、千葉)のイチ押しは「万葉寿司」だ。「お父さんが土産でぶら下げながら買ってきてくれたイメージ」。いなりとかんぴょう巻きのシンプルな内容で1970年代から愛され続けたが、職人の高齢化で一時販売終了。太巻きを加えて復刻させた新作で初戴冠に挑む。

「ふつう」が最大長所な「ふつうの津軽の幕の内弁当」は、郷土の家庭料理がズラリ。濃いめの味付けで、ごはんはあえて少量。つがる総菜(青森)下川原伸彦社長は「ホタテなど津軽の味を再現。新幹線などでビールのつまみにも合う」とアピール。丸政(山梨)の「ワインのめし」も“ワイン飲めし”と訴える。新杵屋(山形)の「米沢牛牛肉どまん中限定パッケージ」は食べ応えのある大きな米沢牛のド直球に加え、具入りラー油を別添えした大人への変化球も投じた。

最多4度の大、副将軍経験を持つ花善(秋田)は、逆輸入弁当を登場させた。同社は今月5日からパリ・リヨン駅に日本駅弁史上初出店。すし好きなフランス人に合わせて考案した「3種の鶏めしいなり」はエビやサーモンを使用し、掛け紙もトリコロールカラーだ。八木橋秀一社長は「10周年記念賞を狙っています」と、フランスでも好評な15年大将軍「鶏めし弁当」の歴代王座を最重要視した。

食べて食欲の秋を満たし、実りの秋を導く票を推し弁に。記者もパソコンの前で駅弁片手に、パクッ、ポチッ。思わず「うまいっ」と叫んだ。【鎌田直秀】

◆駅弁味の陣2021 期間は10月1日から11月30日まで。駅弁購入時に得られる二次元コード記載の投票チケットと、JR東日本専用ウェブサイトから投票された結果の合計により「駅弁大将軍」を決定。エントリーはJR東日本管内1都14県の計67品。2位の「駅弁副将軍」のほか「味覚賞」「盛付賞」「掛け紙賞」「最多応募賞」に加え、新作駅弁が対象の「初陣賞」、6地域のトップ「エリア賞」も選出。今回は過去の大将軍&副将軍受賞駅弁17品から歴代最高王者を決める「10周年記念賞」も設定。投票チケット、専用サイトともに、応募者の中から抽選で賞品も当たる。駅弁をさらに楽しむ心得5か条は(1)五感によって味わうべし(2)風土とともに食すべし(3)仮想現実も楽しむべし(4)列車の旅を本道とすべし(5)掛け紙を鑑賞すべし