政府は11月30日、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染者が、日本で初めて確認されたと発表した。感染が分かったのは、アフリカ南部のナミビアから28日に成田空港に到着した、ナミビア人の30代男性外交官。世界中で感染確認が広がる中、日本も27日から南アフリカなどを対象に水際対策を強化。30日午前0時からは全世界を対象に外国人の入国を禁止したが、それでも避けられなかった形だ。政府は飛行機に同乗していた70人全員を濃厚接触者として扱うなど、一層の厳戒態勢に入った。

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28日に成田空港に到着したナミビア人の男性外交官は、入国時の検査で陽性と判定され、ウイルスのゲノム(全遺伝情報)を解析した結果、オミクロン株と判明した。医療機関で隔離中。厚生労働省によると、男性はモデルナ製ワクチンを2回接種済みで、入国時は無症状だったが、29日に発熱した。同行の家族2人を含む、同じ飛行機に乗っていた70人は1人が発熱したが、いずれも陰性。宿泊施設や自宅で待機している。ナミビアと日本は直行便がなく、厚労省によると、同乗者にナミビア滞在歴がない人がいて、自宅で待機している人がいるという。政府は同乗者全員を濃厚接触者として扱うことにした。

政府関係者によると、感染者の男性はエチオピア発の飛行機に乗り、韓国の仁川空港経由で成田空港に着いた。同乗者70人のうち約半数が仁川空港から新たに搭乗した。

オミクロン株は11月24日に南アフリカが初めて報告。世界で急速に感染確認が拡大しつつあり、各国を震撼(しんかん)させている。国立感染症研究所などによると、人の細胞に侵入して感染する際の足掛かりとなる突起状のスパイクタンパク質に約30の変異があり、感染力が増したり、ワクチンが効きにくくなったりしている可能性が指摘されている。世界保健機関(WHO)は26日に最も警戒レベルが高い「懸念される変異株(VOC)」に指定。重症化しやすいかなどの特性は分かっておらず、世界で研究が急がれている。

米バイオテクノロジー企業モデルナのバンセル最高経営責任者は英紙に、オミクロン株に対する既存のワクチンの効果について、従来の変異株に対するものより弱いとの見解を示した。バンセル氏は、ワクチンの有効性は「大きく下がると思う」と予測。ワクチンの改良には数カ月がかかり、量産は来年になるとの見通しも示した。

日本政府は26日、南アやナミビアなどアフリカ南部を対象に27日から水際対策を強化すると表明。30日には全世界からの外国人の入国を禁止した。国内の監視体制も強化。岸田文雄首相は30日、国内の感染者のウイルスがオミクロン株か把握するため、すべての陽性者のゲノム解析の徹底を指示した。

松野博一官房長官は30日の会見で「水際措置が有効に機能していたと考えている」と述べた。第6波になるのか、防げるか-重大な局面を迎えつつある。