コロナ禍に、オレたちは何が出来るのか-。誕生から30周年を迎えたJリーグ。観客数の上限は撤廃されたが、大きな声援や応援歌は“封印”されたままだ。各クラブが選手、スタッフ、観客などの感染防止対策に懸命に取り組む一方、サポーターたちは原点回帰し、勝利だけでなく、おらが町のために、ホームタウン、ホームチームを盛り上げていく。

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Jリーグ本拠開幕戦勝利の余韻も残る2月28日、スタジアム近くの商店街では、Jクラブの大きなフラッグがなびいていた。買い物をする家族連れ、通学する小中学生、細い路地を行き交う車、自転車で練習に向かうJ下部組織の選手たち。誰もが青空に映える黄色い旗を見つめ、少し暖かくなってきた風も感じながら、笑顔になった。

2日前の26日、新調したフラッグを丁寧に付け替えたのは柏レイソルのサポーターだった。名物サポーターの「みゃ長」さんは、「オレたちに、もっと何か出来ることがあるんじゃないかと思って」。通称レイソルロードと呼ばれる「三小通り商店街」は柏駅から三協フロンテア柏スタジアムに向かうメインストリートだ。サポーターで資金を出し合ってフラッグを購入し、クラブを通じて地域の連帯を深める「レイソル後援会」や商店街にも協力を呼びかけて実現した。

賛同者はたくさんいたが、コロナを考慮し、厳選した約30人の有志が参加。柏駅周辺や、商店街、本拠のある日立台公園などの清掃活動も同時に行った。クラブ、サポーターは「柏から世界へ」を合言葉に、世界に通用するクラブ、選手、ホームタウン形成に努めている。「その夢は諦めちゃいけない。ここは、ACL(アジア・チャンピオンズリーグ)の時はアジアを中心に世界中の人が通る道。選手たちも、Jリーガーを目指す子どもたちも通る道。レイソル色一色にして、町から愛されているんだなという気持ちを抱いてもらうことで、勝利につなげられたら良い」。三小通り商店街の佐藤和裕会長も「レイソルに限らずですが、サポーターたちが、地元の町のために貢献してくれていることがうれしい」と感謝した。

Jリーグは地域発展を目的にした社会連携活動「シャレン」を積極的に実施している。各クラブ主体でも、選手、自治体、サポーターと協力しながらホームタウン活動を継続中。サポーター独自の取り組みも行われている。レイソルサポーターのフラッグ交換&清掃活動は一例。だが、昨季途中から主力選手の移籍が相次ぎ、今季の前評判は高くなかった柏の開幕連勝発進は、サポーターの思いが力に変わった一例でもあるのかもしれない。【鎌田直秀】

◆Jリーグのホームタウン活動 Jリーグ規約第24条〔Jクラブのホームタウン(本拠地)〕第2項で「Jクラブはそれぞれのホームタウンにおいて、地域社会と一体となったクラブづくり(社会貢献活動を含む)を行い、サッカーをはじめとするスポーツの普及および振興に努めなければならない」と定めている。教育機関とも連携し、クラブスタッフや選手らを派遣したり、学生のインターンシップも受け入れている。環境問題ではゴミを減らしたり、清掃活動なども実施。19年度のホームタウン活動調査(当時全55クラブ)では、湘南ベルマーレが活動回数2535回でトップ、アルビレックス新潟、FC東京が続いた。リーグ観戦者を対象にした調査では、川崎フロンターレが10年から10年連続で地域貢献度1位の評価を得た。