全国で約2万2000人の犠牲者を出した東日本大震災から11年となった11日、被災地では、早朝から人々が亡き人を思い、手を合わせた。政府主催の追悼式は、震災から10年の昨年が最後で、岸田文雄首相は福島県主催の式典に出席した。都内では、岩手県陸前高田市で津波の被害に耐えた「奇跡の一本松の根」が展示され、見学者らが黙とうした。

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東京都内で「奇跡の一本松の根」が展示された。陸前高田市の「高田松原津波復興祈念公園 国営追悼・祈念施設」の設計に携わった建築家の内藤廣さんが企画。内藤さんが設計した用途未定の建築「紀尾井清堂」(千代田区)で開かれた。震災から11年となった11日午後2時46分、見学者らは樹齢173年の幅約10メートル、高さ約2メートルの巨大な根を取り囲み、黙とうを行った。内藤さんは「全国でいろんな災害が起きると、記憶が上書きされて、3・11が遠いものになっていく。もう1度、11年前の災害を思い出すきっかけとなって欲しい」と語った。

11年前、約7万本あった高田松原の松は、18メートルもの津波に見舞われ、高さ約27・5メートル、幹の直径約90センチの1本を残して、ほとんどが流された。残った松も海水に10時間以上漬かって根腐れし、12年5月に枯死。幹は同年9月に切られ、根は同年12月に抜かれた。防腐処理が行われた根は市の倉庫に保管されていた。

内藤さんが根の存在を知り、倉庫を訪ねたのが21年4月。バラバラに分割されていたが、その場で組み立て始め、完成後には「生き延びるという強いメッセージを感じた」。「東京で大勢の人に見てもらうべき」と展示会を企画した。

展示は23年2月9日まで。無料だが、予約が必要。一般公開初日の11日は約200人が訪れた。都内の高校に通う16歳の女子生徒は1人で訪れ「力強さを感じました。大人になったら現地に行ってみたいです」と話した。【沢田直人】