東急とJR北海道が今年8~9月にかけて8回、北海道内で運行する豪華観光列車「THE ROYAL EXPRESS~HOKKAIDO CRUISE TRAIN~」の試乗会が14日、JR横浜駅~伊豆急行線伊豆高原駅(静岡)の間で行われた。8両編成で、JR九州の観光列車「ななつ星in九州」などを手掛けた工業デザイナーの水戸岡鋭治氏(74)が、デザインした。客車ごとに木目の内装が違うのが特徴で、車内では北の幸を使った食事も提供される。

ツアーは1回の定員が30人。3泊4日と4泊5日のコースがあり、札幌から帯広、十勝、釧路、根室、知床、富良野などを周遊し、北の大地と自然を堪能する。料金は1人73万円から。

この列車、2017年(平29)に東急が伊豆半島の活性を目的に、傘下の伊豆急行の「アルファリゾート21」を改造して投入した。その翌年9月に起こった北海道胆振東部地震の後の復興支援、地域活性化のため、観光振興の必要があった。経営難にあえぐ地元のJR北海道には観光列車製造の余力はなく、列車を運行していた東急と連携した。

東急では夏場、海水浴や観光のための増便ダイヤで運行していなかったため、道内で走らせることに19年に合意。20年夏からこの列車を運行し始めた。東京~伊豆急下田間などで走る「踊り子号」をはじめ、地続きの鉄道で運行される特急、鉄道会社間での相互乗り入れは多い。「まったく別の地域に電車を運搬して走らせる例は珍しい」(東急広報グループ)。

1年目は5回のツアーで定員150人に対し、1200人以上が応募し、競争率8倍以上の人気だった。だが、コロナ禍でツアーが3回に限られた。昨年は7回のツアーで定員210人に対し、応募は約2倍にとどまった。コロナの感染状況も見なければいけないが、「北海道観光は魅力。3年目となる今年は、リベンジ消費も期待して臨みたい」(東急広報グループ)。

外観を重視した豪華観光列車は、JR東日本の「TRAIN SUITE(トランスイート)四季島」、JR西日本の「TWILIGHT EXPRESS(トワイライトエクスプレス)瑞風」をはじめ、JR九州「ゆふいんの森」「或る列車」、南海「ラピート」など、最近になって鉄道各社が続々と投入し始めている。旅行を楽しむ人が増えて社会が成熟するなか、輸送力の向上を重視にしてきた鉄道会社が、非日常空間である旅の移動も大切な楽しみと認識し始めたからだ。

同乗した水戸岡氏は、「利便性と経済性とは正反対で、手間暇かけたオンリーワンの車両の中で飲食やコミュニケーションができ、目的地に到着するまでの大切な時間が豊かだったら、もっと旅は楽しい。鉄道は平和の象徴。単なる移動手段ではなく、日本が観光立国として発展するために、もっと豊かな時間と空間を車両で提供したい」と話していた。【赤塚辰浩】