牛のピンチを鶏が救うか? 牛丼チェーン吉野家の元常務が、社会人向けの企業戦略講座で不適切発言をしたことを受け、販売開始となる19日に予定していた「新親子丼」の発表会は中止に追い込まれた。しかし、実際に食した人たちの反応を見ると、インターネットを中心に「おいしい」と評判は上々。注文集中で売り切れる店舗も続出する現象も起きている。

「牛丼一筋」をキャッチコピーとする老舗吉野家が19日から6月末までの期間限定商品「新親子丼」の提供を始めた。並盛りで店内飲食の税込み価格は437円。SNSなどでは「とりにく、なんでこんなに身がぷりぷり」「ダシも効いていてトロフワで美味」「多分、また食べると思う」「親子丼は悪くない」など高く評価するコメントが写真付きで並んだ。

今月16日、早大の社会人向けの講座「デジタル時代のマーケティング総合講座」で、吉野家の伊東正明・常務取締役企画本部長(当時)が「生娘をシャブ漬け戦略」「田舎から出てきた右も左もわからない若い女性を無垢・生娘のうちに牛丼中毒にする」などの発言をしたとされる。この内容がインターネットなどにアップされたことで吉野家本社に抗議が殺到。伊東氏は18日付で解任された。

騒動は収まらず、19日に予定していたモデル藤田ニコル(24)をイメージキャラクターとした「新親子丼」の発表会見は中止となった。2012年7月に期間限定商品として約3カ月販売して好評だった「親子丼」をさらにカツオダシを研究し、ふんわりした食感に仕上げた開発期間10年の期待の商品でもあった。

新親子丼のメニュー化に関して吉野家広報担当は「丼商品を主力とする吉野家のブランド力を強めるため、広く愛される親子丼の開発を続けていた」と話し「約1200店舗の規模で均一な味、調理のクオリティーを実現することが非常に難しかった」とも打ち明けた。

昨年10月に輸入牛肉の価格高騰で吉野家は7年ぶりに牛丼(並)の店内提供価格を387円から39円増の426円にした。新親子丼は期間限定商品ながら500円でおつりがくる、吉野家のモットーでもある「うまい、やすい、はやい」にも合致し、今後の展開次第では「販売期間の延長も検討することになるかもしれません」(広報担当)としている。

インターネット上では上々の評判だが、19日の販売以降、注文集中で親子丼が売り切れる店舗も続出している。広報担当は「売り切れる可能性はある。今後は提供する量も考えていきたい」と話している。

実際に都内店舗で食してみたが、オーダーしてからほぼ3分で提供された。ひと口サイズの鶏もも肉はジューシーで甘く濃いだしのしみ込んだ半熟卵と玉ネギの相性も絶妙。あっという間に平らげてしまった。新親子丼の発表会見は中止になったが、藤田ニコルの出演するテレビCMは22日午前11時から放映されている。【寺沢卓】