2021年の「植村直己冒険賞」の受賞者が22日、都内で発表され、人類未踏破の白瀬ルートによる南極点単独徒歩到達に挑戦している阿部雅龍さん(39)が受賞した。110年前に同郷の秋田出身の探検家、白瀬矗(のぶ)を隊長とした南極探検隊が挑戦した最難関ルートをたどり、昨年11月18日に出発。コロナ禍などの影響で日数が減ったことや天候不良にも見舞われ、今年1月11日に一時撤退したが、11月に撤退地点から再挑戦する。

厳しい条件の中、単独で約60日間、重さ100キロ以上のソリを毎日12時間も引き続けた。白瀬隊の最南到達地点である大和雪原(1912年に到達)に立ち、ルートのうち人類未踏の雪原を約200キロ踏破。選考委員の関野吉晴氏(武蔵野美術大名誉教授)は「白瀬ルートは未知のルートで4500メートル級の山脈を超えなければならない。夢の実現に向かってチャレンジする勇気、逆境を力に変えて進んでいく姿と行動力は植村直己さんの生き方に通じる」と受賞理由を説明した。

秋田大在学中から冒険活動を開始した阿部さんは、19年にメスナルートで南極点に到達しているが「一番の夢は白瀬隊の見果てぬ夢を追っての南極点到達。冒険を志した頃からの夢。先人の夢をつぎ、先人たちが見られなかった景色を見たい。まだ僕には不釣り合いな大きな賞ですので、賞に見合う男になるためにも、年末にまた挑戦します」と決意を語った。【首藤正徳】