ロシア軍の退役大佐で著名軍事アナリストのミハイル・ホダリョノク氏が16日、出演したロシア国営テレビの人気トーク番組「60ミニッツ」で「ウクライナ侵攻はうまくいっていない」と語り、共演者を驚愕(きょうがく)させたと米ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。同氏は、開始からもうすぐ3カ月になる侵攻について、「率直に言うと、我々にとって状況は明らかに悪化するでしょう」との今後の見通しを語り、軍事作戦の失敗を認めるような発言をしたという。厳しい言論統制が行われている国営テレビで侵攻を批判するような率直な分析を明かすことはまれで、追放や懲罰刑が科せられる可能性もあると同紙は指摘している。

同氏は「私たちは完全に政治的に孤立しており、それを認めたくはないものの、全世界が私たちに反対しています」とも述べ、軍の士気の低下や西側諸国による制裁、戦闘機や物資など資源不足にも言及。さらに、ウクライナ軍についても「もし十分な兵器が与えられれば、100万人の非常に意欲が高い兵士を派遣する準備ができており、欧米諸国からさらなる軍事支援を受けるだろう」と分析し、祖国を守るという熱意を持つウクライナ兵は最後まで戦おうとしていることは多くのロシア人が認めようとしなくても事実であると述べ、共演する他の5人のパネリストを沈黙させたという。同氏は2月上旬にもウクライナへの侵攻はロシアの国益にはならないと反対の立場を示していた。

侵攻の状況を巡っては、最近もウクライナ軍に押し出されて北東部の第2の都市ハルキウからロシア軍が撤退を開始したことも伝えられており、ロシア政府の当初の計画通りには進んでいないことが指摘されている。そんな中、国営放送に出演したロシアのアントノフ駐米大使も先日、政府内の一部有力者は軍の撤退を望んでいると語っていたことが伝えられており、政府内で混乱が生じ始めている可能性も取りざたされている。(ロサンゼルス=千歳香奈子)